1982年の吉田聡先生④『ゼロハンぶぎ』 | STATIONS OF THE 暮らす。

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しがない新中年の何も起こらない日々

読切版『湘南爆走族』2作目が少年KINGに掲載された後、同じ少年画報社の青年誌ヤングコミック82年11月10日号(10月27日発売)に読切作品『ゼロハンぶぎ』掲載。

当時ほぼほぼ無名のハズだがかなり大きく表紙に載っている。期待の表れ??

 

主人公・江口がライバル権田率いる横浜キッドとバンドで対決?という内容のコメディで、設定は『湘爆』とまったく異なるパラレル作品。

『湘爆』ヒット中の85年に出た少年KING増刊湘爆特集号に再掲、“もうひとりの江口洋助”の副題が添えられる。その後度々単行本に収録されているが、現在読める『ゼロハンぶぎ』には初期と画風が違い、明らかに描き直されている箇所がある(「いたそー」のコマ)。

 

あんまり気になったので国会図書館で掲載誌を確認(余談:2020年1月の話。僕はこれをキッカケに国会図書館通うようになりました)。

やはり数箇所描き直されており、そこから事情が見えてきた。

『ゼロハンぶぎ』の江口はタバコを吸ってたのだ。『湘爆』の江口はタバコを吸わない。これは少年誌連載であることを考慮してるとTV番組『漫道コバヤシ』で吉田先生は言ってらした。青年誌掲載の『ゼロハン』を85年KING増刊に再掲するにあたり、江口のイメージと少年誌であることを踏まえて構成を変えたものと思われる。

ちなみに江口の通う高校の名前も読切版同様“西湘高校”だったがこれも“波打際高校”に変更されている。

 

で、これも余談。2014年から数度売られていたMy First BIG版(いわゆるコンビニコミック)『湘南爆走族[伝説の湘爆結成編]』にも『ゼロハンぶぎ』は収録されているが、基本的に内容が同じハズの特装版(2023年12月出版)にて解説に大幅な追加があったことは個人的にかなーり衝撃でした。

↑My First BIG版 解説

↑特装版 解説

 

いまひとつ誕生経緯が不明な作品ではあるが、少年誌でうまくいかなかった場合、こちらの江口が伸びていく可能性もあったのだろうか?当時吉田先生はまだプロの自覚が無く(まだ連載前なので無理もない)、かといってバイトもせず、家族の非難を浴びながら毎日朝5時まで遊び歩いていたという…