4月24日(日)の床の間 | お煎茶の話でもしましょうか・・・

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賣茶正流宗家家元三代目、堤好石


4月24日は私どもの春の煎茶会でした。
6年ほど続いた秋の会から久方ぶりに
春に戻し、この日を迎えた次第です。
季節が変われば、床の間の掛け軸もお花も
お道具もお菓子も変わり、気分も一新します。
五島美術館の風雅な茶室で、社中一同、
新たな気持ちで臨みました。
あいにく朝方は雨模様でしたが、午前中に
雨も上がり、お茶会日和の1日になりました。
この日の床の間はこんな感じにまとめました。

掛け軸は雲華上人の「蘭竹の図」です。
江戸中期、豊後竹田(大分県)の満徳寺に
生まれ、やがて京都に出て仏教と儒学を修め、
精進の結果、浄土真宗の大本山、
東本願寺の講師にまで出世した僧侶です。
しかし上人は僧侶としてより詩歌と画に
秀でた才を発揮し、数々の名作を残しています。
特に「蘭」の画を得意としており、
このお軸も蘭と竹を見事に描いたものです。
上人は京都の地で頼山陽、田能村竹田、
貫名海屋など当時の著名な文人たちと
交わりを持ち、その名を広く知らしめました。

この日のお花はモッコウバラ(木香バラ)の
一種活けにしました。懸崖の枝にたわわに咲いた
クリーム色の小さな花は根締め不要の見事な枝ぶり。
大きめの籠にふさわしい仕上がりになりました。
ところで籠は飯塚浪奸斎の作です。
わが国で初めて籠を美術工芸の分野に引き上げた方です。
浪奸斎以降、竹工芸家は名前を作品に彫り入れるなどして
美術の世界で名乗りを上げています。
たまたま浪奸斎のひ孫サンという若い女性がお客様になり、
曽祖父の作品と出会って偉大な功績に
触れていただいたことも付け加えておきます。

五島美術館の松壽庵は1間半の床の間に
1間の床脇があり、他にも書院があって、
待合にも床の間と床脇があります。
私はお花を四杯、盛り物と画題を三つ飾りましたので、
茶会風景と画題などは後日ご紹介します。
床脇は久しぶりに「文房飾り」にしました。
硯、墨、筆、紙の文房四宝に硯屏、巻などを
配置しましたが、たまたま祖父が残してくれた
戦前の手紙が出てきましたので、一緒に飾りました。
なにしろ宛先が「東京市麹町区土手三番町」という
現存しない住所が達筆で書かれていましたので、
お客様も大喜び。珍しがられたり、感心されたり、
この日の目玉になったようです。
上段には観音像と白磁の香炉、数珠を置き、
一輪挿しにはシャクヤクを入れました。
全体として「お煎茶」らしい詫び寂びの効いた
床の間になったのではないでしょうか。