艇庫
 

読みかけに月光挿み戻らざる
 

桃を剝く週末錆びてをりにけり
 

星座図の蛇やけものや秋暑し
 

まつすぐと艇庫に帰る天の川
 

背もたれに背中溺るるいわし雲
 

刈る音を小脇に抱へ蘆を刈る
 

鳥渡る地層に眠る海の跡
 

わが影に背骨を通す十三夜
 

烏瓜引いて晩景くすねたる
 

短日の辞書の厚みに置く追記
 

風邪の身を雑踏よりも引きはがす
 

荒星の銃把に沈むシネマかな
 

降誕や枯野に靴の脱がれあり
 

クロッキーを了へて枯木となりにけり
 

柊を挿して感度のにぶき空
 

燐寸擦るうすらひほどの火の重さ
 

中吊の文字は真つ赤に雪の果
 

不時着の水面のやはき春の雪
 

口笛のをはり濡れをる春の闇
 

ざらつける銀板写真花曇
 

    ※ この20句に関しては記すのみといたします。