季語は「鵺/ぬえ」で兼三夏。季語「虎鶫」の傍題です。「虎鶫」は普通にツグミ科の鳥ですが、「鵺」と表現した場合には、その鳴き声を通して想像上の怪鳥のニュアンスが組み込まれることになります。
 

切れは切字「けり」に拠り句末に在ります。
 

「びつしり」は「残り」に掛かるのですが、意味的には「闇」の密度の濃さを言っていることになります。虎鶫の声を実際に聞いたことがないので何とも言えないのですが、夜陰に鳴くことを含め、「ひいい」と表現される鳴き声には、もの寂しいものが在ることは間違いないようです。また、「びつしり闇の残りけり」には、その鳴き声を聞いた後、物音を消して静まってしまった闇に対する発話者の虚勢のようなものすら感じられます。
 

一句はおそらく「鵺」という季語から作られているのですが、人間の持つ「闇」に対する恐れは表現し得ていると思います。もっとも、人の世界から「真の闇」が無くなりつつある現代に於いては、この「闇に対する恐れ」そのものが空想的なものとなりつつあるようでもあります。