季語は「初夏」。「初夏」のイ メージは人それぞれかも知れませんが、木々の瑞々しい緑と、衣類の白が一般的なところでしょうか。掲句、前者の「新緑」「新樹」を踏まえての「葉擦(はずれ)」、葉の擦れ合う音と思えます。
切れは句末、切字「けり」による詠嘆です。辞書には「詠嘆の意味をこめて、これまでにあったことに今、気づいた意を表す」とあります。そのことが今まで継続して在ったことに気付き、気付いた今、そのことに詠嘆している、ということになります。
この「廊下」、「渡り」のニュアンスから言えば「渡り廊下」、二つの建物を繋ぐ外に開かれた廊下、昔で言えば吹き放ちの「渡殿(わたどの)」でしょう。
発話者は渡り廊下に立ち止まり、皮膚に初夏の風を感じつつ、視線をその風の通り抜けてきた木々の新緑に遣っていたのですが、ふと、その瑞々しい緑の葉擦れに気が付いたのです。そして、ああ此処は、この渡り廊下は、あの葉擦れの音の通い路だったのだなあ、と思ったのです。