第1章 シーズン 0
組織のサインと破壊工作(サボタージュ)
極秘諜報部「チーム318」に、本部(指令部)からの緊急コンタクトが入った。
コンタクトは、あまりにも古典的(クラシック)な手法。
セーフハウスの近くにある古ぼけた祠の前。そこに置かれた、「ピンクのタイラバ」――。それが、人工衛星の暗号通信すら遮断する海のブラックボックス、通称「デビルズトライアングル」への出撃サインだった。

(祠の前にピンクのタイラバが サイン)
下されたミッションは唯一つ。
「無人島沖で、対象と接触せよ。」
相棒である318氏の激闘、突如として姿を現した謎の生命体、そして私がコードネーム「51」を仕留めるまでの一部始終。これが、その壮絶な記録の始まりである。
深海工作員が仕掛けた「5つのトラップ」
限られた者しかアクセスを許されない聖域への侵入を果たす、至上命令。
しかし、我々の行く手を阻むように、深海の知的生命体、あるいは謎の工作員による巧妙な「破壊工作(サボタージュ)」多数のトラップが次々と襲いかかる。
- 電源コードからの意図的な「過電流発煙」
- 油圧インフラを狙った「チルトアップ機構の破壊」
- 何者かによる「ギアオイルへの異物混入(白濁)」
- ボート側テールランプの電気系統を遮断する「コネクタ完全破壊」
- バウステンレスレールのガタツキ、およびネジ紛失
だが、この程度の妨害工作で、チーム318が作戦を断念するわけにはいかない。
敵は我々の「機動艇 安D丸(マイボート)」をドックに釘付けにするつもりだったのだ。
だが、事務局長たる私が、この程度の嫌がらせで根を上げる事はない。
318氏と連携し、マニュアルリリースバルブを手動で強制開放。力技でセキュリティを突破し、関の荒波へと船体を滑り込ませた。数々の苦難を乗り越え、荒波を越えて。
私はマイボートのエンジンの咆哮とともに、豊前中津園所属海域にある「無人島エリア」への潜入を無事に成功させた。
関の荒波が育むこの地は、古くから数々の怪しき伝承が残る場所。
人はそこを「海のブラックボックス」、別名「デビルズトライアングル」と呼ぶ。
あの日、私と318氏が目撃したのは――
深海の底に眠る「鮮やかな生命体」との未知なる接触。
そして、この私に仕掛けられた、あまりにも巧妙な「精神的な罠」の始まりだった。
TAI シーズン1
――前兆、そしてエンドルフィンの罠――
ファースト・コンタクト
デビルズトライアングル潜入後、最初の異変は同乗する主席諜報員・318氏のロッドに訪れた。
海中の不気味な静寂を切り裂き、ラインを通じて伝わる暴力的で圧倒的なエネルギー。それは深海の知的生命体による、我々の戦闘能力を測るための「威力偵察(ファースト・アタック)」だった。暴力的で圧倒的なパワーがラインを通じて襲いかかる。リールが悲鳴を上げ、ロッドが限界まで絞り込まれる。
しかし、318氏は冷静だった。死闘の末、私が構えるタモへと滑り込ませて捕獲に成功したのは、「60cmの大真鯛(怪物)」だった。
その魚体は、深海の暗闇に潜んでいたとは到底信じられないほどの、異様なオーラを放っていた。まるでこちらの理性をハッキングするための、動く芸術品のようだ。
- 燃えるような狂気的な赤色のボディ
- 妖しく輝くアイシャドウのようなブルーの輝斑
深海が創り出したその圧倒的な美しさを前に、318氏は不敵に言い放った。
「俺にとってはマイナー級(新人のエージェント)だな……」
その不敵な言葉とは裏腹に、彼の脳内はすでに、深海が仕掛けた恐るべき精神トラップ「タイラバ・エンドルフィン中毒」という名の、異常な興奮状態に支配されつつあった。
ターゲットの放つ狂気の色彩が、諜報員の理性を少しずつ狂わせていく。
そして、デビルズトライアングルからの波状攻撃は、ここからさらに加速していく。
TAI シーズン2
――偽りの静寂:サイレント・キラー――
「完全な死の領域」への変貌
豊前中津園所属海域、通称「デビルズトライアングル」の深部は、突如としてその表情を変えた。
先ほどまで、ひと流しごとに確実な生命反応を伝えてきていた海底が、ある一線を境に「完全な死の領域」へと変貌したのだ。
ロッドティップを揺らす波の振動以外、ラインを通じて手元に伝わるのは、背筋が凍るような「無」。
ソナー(魚探)には確かに生命体の影が映っているにもかかわらず、海底は完全な無音へと変わった。こちらの等速リトリーブ(規律)を狂わせるための精神的なジャミング(電波妨害)だ。
しかし、深海の底に潜む彼らは、こちらの出方を見透かすように沈黙を保ち続けていた。
この恐るべき静寂こそが、深海の知的生命体が仕掛けた第二のトラップ「サイレント・キラー」
「もうここには、狙うべき生命体など存在しないのではないか?」
「我々はすでに、もぬけの殻となった偽りの戦場に踊らされているのではないか?」
リールを巻く指先が、わずかに狂う。等速巻きという絶対の規律が、焦燥感によって乱されそうになる。
規律・規律
規律の遵守 チーム318で共通する規律
規律を律することでチームは統率される
それを乱せばチーム力は脆弱に
よって作戦に危機が及ぶ
規律・規律 規律の遵守・・・
曇天で底冷えする海の静寂は、じわじわと、だが確実に私の精神を蝕み、底なしの疑心暗鬼へと引きずり込んでいった。
TAI シーズン3
――攪乱、そして深海のブレイン・ハック――
精神攻撃(ブレイン・ハック)の発動
精神の摩耗がピークに達し、静寂の重圧に押し潰されそうになったその瞬間、罠は突如として発動した。私のロッドティップが海面に突き刺さる。
「――ガガガガッ!!」
虚無の海を切り裂き、手元を襲う強烈な反転流。リールのギヤが悲鳴を上げ、極限まで調整されたドラグが「ジジジジッ!」と狂ったように鳴り響く。
「ついに来た……! 40、いや50オーバーの大鯛か!?」
脳内にアドレナリンが激流となって噴き出す。これまでの絶望が一瞬で消し飛び、私の全神経がロッドへと集中した。
激しいヘッドシェイクをいなし、リールを巻く。
これは深海の機密を暴くための、私と奴らとの真っ向勝負だ。
しかし、この歓喜こそが、奴らの狡猾な「ブレイン・ハック(精神攻撃)」の始まりだった。
激闘の末、海のブラックボックスから姿を現したのは、神々しい真鯛のシルエットではなかった。
陽光を浴びて、常識を遥かに超えた怪しい輝きを放つ、あまりにも「鮮やかな色彩」の生命体。
- ネオンブルーのストライプ
- 不自然なほど鮮烈なピンクと黄色のグラデーション
――「私の好物、特殊撹乱工作員IRA30」

「……っ!」
ブレイン・ハックは完了していた。
本命(ターゲット)の気配を完全に誤認させられ、外道という名のダミーに踊らされていたのだ。
チーム318の規律を自ら乱し、深海の罠に嵌まった己の未熟さに、激しい戦慄と屈辱が込み上げる。
その時、司令部から、冷酷な指示が飛んだ。
318氏が叫んで私に伝達する!
『目標をロスト。作戦は失敗だ。これ以上の消耗は意味がない。現場(アングラー)は直ちにリトリーブを中止し、帰港ナンバー31851の途につけ・・・と!!!』
安全なキャビンから、こちらの死闘も見ずに下される撤退命令。
だが、私のラインの先、暗黒の海底からは、まだかすかに「真の標的」の、冷徹な殺気が響いてきている。ここで退けば、二度と奴らには届かない。
baru「撤退やもなしか・・・司令部の判断は極めて合理的かつ最善の結論だ・・・」
リールを握る指先が、怒りで微かに震えた。
その時318氏は吠えた。
「ふざけるな、私は司令部ではない。教官に教わったような魚探の数字だけを見て判断するな!現場では血を流し、等速巻きの規律を維持し続けているのは誰だと思っている!この海の深淵に、奴らはまだ潜んでいる。一歩も退く必要もない!」
そのあと彼の言葉が静かに続く・・・・
318:「本部の言うことなんて無視だと思ってましたよ。私のロッドティップを見てください。まだ完全に生きてます。奴ら、イラを囮にして、本隊はそのすぐ後ろに潜伏しているはずです!」
baru:「3ちゃん、お前のベイトリールはまだ耐えられるか?」
318:「当たり前じゃないですか。ドラグは極限まで締め上げてます。俺のタイラバ(ネクタイ)は、奴らの脳天を狂わせるbaruマジックに変えてますよ。ずっと船長の側で鍛えてきましたから。船長が落とすなら、俺も地獄の底まで落として付き合いますよ!」
baru:「よし、猶予は次のワンフォール。同時にクラッチを切るぞ」
318:「了解! アングラーの執念、深海のブレインどもに見せつけてやりましょう!」
二人の親指が同時にリールのクラッチを押し下げる。
「カチッ」という金属音が重なり、タイラバとステンジグは規律を取り戻した速度で、再び暗黒の深海へとフォール(投下)されていった。
真の決戦は、ここからだ!
しかし、船上は奇妙な空気が流れた。
彼(318氏)には気高き真鯛。私には、あまりにもカラフルなイラ。
「笑いの神降臨だな……。まさか、本部が言っていたミッションとは、この屈辱に耐えることだったのか!?」
深海の工作員たちは、暗黒の底でこちらの様子を覗き見ながら、悔しがる私を嘲笑っているに違いない。
あまりの理不尽さに私の精神は完全に攪乱された。
だが、海は私達に立ち止まる猶予さえ与えない。
さらなる異常事態が、チーム318を襲う。
私がイラを前に絶望しているその横で、318氏の放った「ピンクのタイラバ」が、まるで深海の意志とシンクロしたかのように暴れ始めたのだ。
「ヒット!」
静かに、しかし確実に獲物を追い詰める318氏。
タモに収まったのは、堂々たる55cmの真鯛。
それだけでは終わらない。
海の神に見放された私を置き去りにするように、彼は息つく暇もなく同サイズ、55cmの真鯛を「立て続けに2匹」も拿捕したのだ。
船上は318氏による怒涛の真鯛ラッシュに支配された。
対する私は、手元に残された「IRA」という名の精神的トラップに囚われ、身動きが取れない。
焦り、嫉妬、イライラ、そして絶望。
負の感情が、私のブレインを黒く染め上げていく。
(これは、深海の知的生命体が、我々チーム318を内部分裂(ディバイド&コンカー)させるために仕掛けた、最も残虐な対人心理兵器なのではないか……?)
疑念とプライドの狭間で私が限界を迎えようとしたその時、318氏の声が静かに響いた。
318「この3匹目は、baru船長のクーラーboxへどうぞ」
激闘の最中に放たれた、あまりにも粋で、あまりにも紳士的なそのサプライズ。
その一言が、深海のトラップによって凍りつきかけていた私の心を一瞬で溶かした。
内部分裂の罠を見事に打ち破る、相棒の圧倒的な器の大きさ。
私はただ、その熱い計らいに深く感謝するしかなかった。
しかし、デビルズトライアングルの夜明けはまだ遠い。
チーム318の戦いは、ここからさらなる未知の領域へと加速していく――。
第1章----to be determined----
次回予告
TAI シーズン4
――核心、そしてコードネーム「TAI 51」――
相棒・318氏が魅せた、圧倒的な真鯛ラッシュ。
そして、暗黒の深海からbaru船長を嘲笑うかのように現れた、ネオンカラーの刺客――「イラ」。
絶望の淵で男のプライドが激しく燃え滾(たぎ)る。
baru「……このままでは終われない。俺の海を取り戻す。」
屈辱を糧に、男は夜な夜な秘密基地で削り出した最終兵器「baruステンジグ」を手に再び立ち上がる。
腕の筋肉が千切れそうになるほどの決死のファイトの果てに、デビルズトライアングルの闇から姿を現したのは、神々しいまでの真紅の輝きを放つ、美しくも冷徹な横顔だった。
しかし、計測器をあてたその瞬間、チーム318の全戦果を揺るがす「ある衝撃の真実」が突きつけられる。
すべてを欺く深海の壮大な作戦とは――?
そして、その魚体に刻まれた「驚愕の数字」が意味するものとは一体……!?
「待たせたな深海。――これが、俺の逆襲だ。」
2026年秋―― チーム318、全層包囲網(フルコンタクト)開始。
真実は、我が家の食卓で明かされる。
この物語はフィクションであり、登場する人物・団体・事件・名称・海域等は架空であり、実在のものとは関係ありません。