改:第82話.ホワイトナイト【連枝の行方.第二部①】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第82話.ホワイトナイト

【連枝の行方.第二部『世界は愛に満ちている』①】

ニューヨークのセウングループのオフィスで、最初に東海建設の異変に気づいたのはヤン・ドンヒョンだった。彼はソウルから送られてきた定期報告書を見て首をひねった。
「おかしい…東海建設の融資評価が『預かり』になっている」
「記載ミスじゃないのか」
「そうではないようです。喚起勧告が出ています。『支払いは当月決済、現金のみ』」
「どういう事だ」
テワンはドンヒョンの手から定期報告書を取り上げた。
「こちらもです。優良企業の一覧から東海建設の名前が外されています」
「現在、東海建設が手掛けている大きな工事は何だ」
「春川の住宅開発です。場所は山の手の丘陵地区です」
「丘陵地区?もしかして山の手教会がある辺りか」
「はい。あの一帯を春川の新しい住宅地として…」
資料を調べていたドンヒョンはハッと手を止めた。
「春川商店街の再開発に新たに着手したのは中央建設…中央建設は途中から東海建設へ住宅地の全面買取りを求めています」
「何だって?!」
「テワン様、これを」
そこにはミヒとヒョンスの名と共に『婚約解消』の文字が記されていた。

テワンは押し黙ったまま口元へ手を当てた。婚約式の日のヒョンスの姿が目に浮かんだ。鏡の中の弟は思いを断ち切り静かに微笑んでいた。
「やはり無理だったか」
「中央建設はそれで東海建設へ…」
テワンは硬い表情のまま首を傾(かし)げた。
「それだけであのキム社長がこんな手に出ると思うか」
ドンヒョンの目はノーと言っている。
「何かある」
「はい」
「全容を知りたい。直ぐに調べてくれ。僕はヒョンスに直接聞いてみる」

マルシアンへ電話をすると、ヒョンスはちょうど出社したばかりだった。
「ヒョンスか」
「はい。兄さん、お久しぶりです」
ヒョンスの声は弾んでいた。
「仕事はどうだ。今は山の手教会の修復か」
「えぇ、順調に進んでいます。今日もこれから春川へ行きます」
「そうか。では仕事以外で聞きたい事がある。場所を移せ」

誰もいない部屋へ電話が切り替わると、ヒョンスは途端に肩を落とした。
「兄さん、俺…ミヒと別れた。今、ギョンヒといるんだ」
「あぁ、分かっているよ」
「父さんにも母さんにも迷惑をかけて、俺のせいで会社も大変な事になっている」
ヒョンスの声は涙で震えていた。
「しっかりしろ、ヒョンス」
「うん」
「君が知っている事を全部話してくれ」

順を追って聞いていたテワンは男の名が出ると顔を強ばらせた。
「イ・ホテと言ったのか」
「あぁ、そいつセウン一族だって本当か」
テワンは言葉に詰まった。
「答えてくれ、兄さん」
「イ・ホテはセウン一族の一員だった。だったと言うのは、違法な取引でニューヨークから追放されたからだ」
「そんな奴が何で俺やミヒを巻き込んだんだ」
「不正を暴(あば)いたのは僕だ。僕の手の届かない所で復讐したかったのだろう」
冷静を装いながらもテワンは怒りに震えていた。
「ギドク氏へ、今晩にでもお話ししたいと伝えておいてくれないか。それまでには資料も集まり、対処法を検討出来ると思う」
「ありがとう、兄さん。それからイム・ウソクの情報に詳しい人がいるんだ」
「誰だ」
「ギョンヒの兄さん、イ・ヨンピョさんだよ。以前新聞記者をしていてウソクの詐欺事件の取材をしている。それで今回も色々と動いてくれたんだ。今は明洞グランドホテルのフロアーで働いているよ」
テワンは聡明な顔をした青年を思い出した。
「後で連絡してみよう」
「伝えておくよ」
「ヒョンス、元気を出して春川へ行ってこい」
「忘れたのかよ、チョン・ヒョンスはいつだって元気だぜ」
学生時代のやんちゃなヒョンスの顔が目に浮かんだ。
「頑張れ、ヒョンス」

次回:第83話.手腕

(風月)