HAIKU日本2021秋の句大賞
糊かたきカフスの穴や九月尽
[ 東京都杉並区 田中有楽 ]
(評)九月尽というのは、陰暦
九月晦日のことを言います。
陽暦にすると11月初旬にあたり、
2021年では11月4日が陰暦9月
30日でした。
陰暦では、7月、8月、9月を秋と
しますので、九月尽という季語
には、秋を惜しむ気持ちと暮秋
の感慨がうかがわれます。
掲句では、カフスと九月尽の取
り合わせの新鮮さがあります。
日頃からカフスを使われている
ビジネスパーソンか、フォーマル
な会に出席するのにカフスシャツ
を着用される場面なのでしょう。
袖口を留めるときに、糊のつよさ
を感じたという細やかな発見と
着想がこの句の眼目であり、
袖口のかたい触感は暮秋の肌
寒さに通じているのでしょう。
生活のなかで季感を発見した
すぐれた作品です。
2021秋の写真俳句大賞
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綿帽子嫁入りを待つ葡萄かな
[ 新潟県新潟市 小野茶々 ]
(評)とても可愛らしく詠んだ写真
俳句です。手塩にかけて育てられ
た葡萄がより一層愛しく思えます。
丁寧にかけられた保護紙を綿帽
子に見立てる、その発想に驚きを
覚えました。行き届いた世話と愛
情が葡萄を一段と輝かせ、さらに
嫁入りの雰囲気を醸しています。
化粧箱に入れられて、どのよう
なところに嫁に行くのでしょうね。