大賞
金剛の杖音亘り水温む
[ 大阪府池田市 宮地三千男 ]
(評)「水温む」とは、立春後の
寒さがゆるんできて池や沼
川などの水から冬の冷たい
感じが消えてあたたまって
きたことを言います。
明るくなった日ざしに水面が
きらきらとかがやき水辺の植
物が芽を伸ばしはじめ水底
の魚も動き出す。春の息吹
が触覚、視覚を通じて感じら
れるようになります。
「金剛の杖」という措辞から
は「同行二人」と書かれた笠
をかぶった遍路の姿が思い
浮かびます。
掲句では金剛杖と「水温む」
の取り合わせとして、一句
全体で遍路を詠ったところ
が巧みです。
「同行二人」の弘法大師の
お守りを受ける遍路の歩み
を自然の造化のな見事見事
に捉えています。
大賞
老い二人ゆるりゆるりの桜人
[ 和歌山県橋本市 徳永康人 ]
(評)たった半月ほどで地に
落ちてしまう桜とそれに
反して長い時を経て仲
睦まじさという得難い実
を得た夫婦。それが
「ゆるりゆるり」という擬
音にうまく絡んでいます。
桜を踏みながら遠くへと
歩いていくこの奥行きあ
る写真も、そのテーマを
浮かび上がらせていて
手練れがつくった写真
俳句といえるでしょう。