時間の流れは速い。
人は、一瞬の刹那に生きている。
誰もが、今この瞬間が一生続くと、どこかで信じて生きている。
「どんな明日が来るのか?」よりも、
「今」が永遠に続くような気がしている。
僕が「車が速い」ということを意識したのは、スピードメーターの数字だったのかもしれない。
子供の頃、ミニカーを眺めながら、こんなことを考えていた。
この車にジェット機のエンジンを載せたらどうなるんだろう?
馬力のあるエンジンさえ載せれば、車はもっと速く走るはずだ。
そんな単純な発想だった。
そして僕たちは、大人になって、本当にそれを試してしまった。
金持ちの息子が乗っていたZのエンジンをばらした。
ビール瓶のケースを並べ、その上でエンジンを転がしながら、シリンダーを研磨する。
排気量も大きくする。
馬力を上げる。
もちろん、それだけでは終わらない。
タコ足からマフラーまで溶接工場に頼み、当時のチューニングショップにも相談した。
ブレーキも大きくする。
キャリパーも大きくする。
アルミホイールも大きくする。
タイヤの外径は変えずに、扁平率を下げる。
ロールバーを入れ、シートも軽量化する。
RECAROのシートに交換する。
ミッションも、そのパワーに耐えられるようにする。
クラッチも変える。
ターボも、タイムラグをなくすためにツインターボにした。
僕たちは、本気だった。
そしてテストの日が来た。
谷田部のテストコースを借りて、実際に試走する。
その頃の僕には、まだ運転技術がなかった。
だから僕の役目は、ビデオ係。
ビデオカメラを構えて、走ってくるZを追った。
ところが、速すぎる。
ファインダーでは追えない。
仕方がないので三脚を立て、目測と勘でカメラを向ける。
すると――
アニメのように、先に車が通り過ぎる。
その後から、爆音が追いかけてくる。
「速い……」
そう思って、ようやく車を確認した時には、Zはもう僕の目の前にいた。
その瞬間だった。
僕は、ふと思った。
僕は、何になるんだろう?
彼女との将来は?
どんな大人になるんだろう?
あれだけ速い車を作ることに夢中になっていた僕が、突然、自分自身の未来を考えた。
そして、車の方にも現実が待っていた。
Zは、一回の最高速度アタックでオーバーフロー。
一緒に走った190Eのコスワースエンジンを積んだ小柄なメルセデスには敵わなかった。
改造した5M-Gのソアラでさえ、思ったようにはいかなかった。
僕たちは、エンジンの馬力を上げれば車は速くなると思っていた。
でも、違った。
シャーシは、エンジンよりも速くなければならない。
その時の僕には、その言葉の本当の意味なんて分からなかった。
でも――
後になって、この考え方が、僕の心を大きく揺さぶることになる。
今日は、ここまで。
話すと長いお話ですが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
まだまだ、この物語は終わりません。
そして、この物語は――
やがて、ゴルフへと続いていきます。
