2016年映画総評 その5:邦画編 |  書店員バツ丸の気ままにエンタメ

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いよいよ、メインの邦画編です。


<1月1日 選出を一部変更をしました>





☆最優秀邦画作品賞

・大賞:この世界の片隅に
・次点:ぼくは明日、昨日のきみとデートする
   :君の名は。

洋画と違い、邦画は佳作以上の作品が多かったように思う。これら作品以外にも、「ちはやふる」「古都」「怒り」「リップヴァンウィンクルの花嫁」「青空エール」「後妻業の女」などが良かった。

ただ、大賞は「この世界の片隅に」を選出。「歌バカ」やmixi時代を含め、アニメ作品を大賞にしたのは初。

不可能と思われたあの原作の雰囲気を、「サイドストーリー」を含め見事に再現しただけでなく、当時の時代の世相や生活、ミリタリー考証まできちんと反映させ、「映像」としての面白さや演出に見事につなげた点が本当に素晴らしかった。現政権だけでなく、世界的に保守主義やポピュリズム、復古主義やテロリズムの流れが強まっていく今の時代。為政者たちの美辞麗句で塗り固められた威勢の良い言葉に乗せられた結果の「あの戦争」で最も被害を受けた人が誰か? 心身ともに傷つくのは誰か?

そういったことを考える上で今作は何よりの指標となろう。「ほたるの墓」と共に、この先の日本に於いて永遠に語り継いで頂きたい歴史的作品だ。日本人なら観てほしい。

次点の2作のうちの1作も、今作と同様のアニメ作品「君の名は。」を選出。RADWINPSの音楽の良さに引っ張られた感があるが、それは彼らを選んだ製作者の力量として称賛されてしかるべき点だろう。歴史的興行収益が文句なしに示す、アニメ史に残るべき傑作だ。

この監督ならではオタ要素やエロチシズムを盛り込んだ「セカイケイ」の様相を見せつつも、いい意味で洗練されたように思う。中盤から後半にかけての圧倒的な勢い躍動感と、「まあ、このオチしかないな」と思える最後の場面には年甲斐もなくカタルシスと感動とを感じてならなかった。

それにしても、ここまでのヒットになるとは・・・。作品の公開規模や制作規模は確かに大きくなったものの、作風としては従来の新海路線とそう大きくは変わっていないだろうこともあり、細田作品と違って、特に若い世代からの支持を得られそうにないと、公開前から公開当初まで思っていたが・・・。実際は真逆で、若い世代らに支えられたが故の大ヒット。未だにこのブームを理解できていない。

次点もう1作は、まさかまさかの「ぼく明日」。原作は正直面白くなく、小松菜奈が主演している以外何一つ期待せずに鑑賞したが、個人的にドツボであった。

原作小説が凡作であった「疾風ロンド」もそうだけれど、映画ならではの「実写映像が故の面白さや説得力」を作品を通して見せてくれたことが良い結果に繋がったと思う。

今作ではヒロイン、小松の存在感と演技、そして、クライマックスへと至る映像と演出の巧みさがそれに該当しよう。

今作を含め、どうも個人的に時間や空間を超える運命の出会いや強固な人の縁を題材にした作品いめっぽう弱いなと、改めて感じさせられた。


☆最優秀主演男優賞

・大賞:岡田准一(「海賊と呼ばれた男」)
・次点:佐藤健(「世界から猫が消えたなら」)
   :鈴木亮平(「変態仮面2」)
   :大木民夫(「planetarian~星の人~」)

大賞は有力男優ひしめく中、ひとり別次元の役への力の入れ具合を見せつけた岡田君に。特に、作中年齢ごとに即した「加齢」の演技が見事であった。間違いなく彼の代表作と言えよう。

佐藤は相変わらず、同一作品内における役の演じ分けがうまい。いい俳優だ。

鈴木亮平はどの作品においても役作りの見事さが光っている点を評価して。ただ、「海賊~」は良かったが、「俺物語」や「変態仮面」では、彼のプロフェッショナルな姿勢が悲しいかな、作品で浮いてしまっていたのが残念至極。

大木民夫はとにかく、圧倒的な演技力と存在感とを評価して。これぞプロの声優、これぞ大御所ともいうべきものだ。すべての声優や俳優が見習うべき完璧な演技であった。


☆最優秀主演女優賞

・大賞:小松菜奈(「ぼくは明日、昨日の君とデートする」)
・次点:広瀬すず(「ちはやふる」)
   :黒木華(「リップヴァンウィンクルの花嫁」)
   :上白石萌音(「君の名は。」)

今年の若手女優シーンも非常に充実していたと言える。その中でも、小松・広瀬・芳根・吉岡・二階堂・中条といった面々の活躍が際立っていた。ただし、銀幕においては、演技と出演作両方の質の高さに関し、小松・広瀬の実質2強体制であったと考える。

小松菜奈はセリフ回しなどに課題はあるが、やはり超個性的なルックスに抜群のスタイル、何よりそれを柱とした圧倒的な存在感と多彩な表情が素晴らしかった。上記作品は、小松だからこそより作品の魅力が増したのだと断言できる。

小松・広瀬・芳根・二階堂・・・、若手女優ネクストジェネレーションの2017年での凌ぎあいも楽しみでならない。

黒木はさすがの上手さと存在感とを評価して。作品の質や世界観にマッチするとこの人は本当に強い。


☆最優秀助演男優賞

・大賞:豊川悦司(「後妻業の女」)
次点:綾野剛(「リップヴァンウィンクルの花嫁」)
  :香川照之(「クリーピー」)

大賞はうさん臭さ全開の「結婚コンサルタント所長」の肩書を有した極悪詐欺師役にこの上なくはまっていた。正直、ここ何年もの彼は、往年の2枚目的役どころとは無縁の怪しさ全開のそればかりなのだけれど、今やこの点で彼以上の者はいないとすら思う。

綾野は個人的に全く好きな役者ではないが、この作品での演技や「コウノドリ」での演技を観ていると、やはりうまい役者だなと痛感させられる。結局彼が演じた役どころの意味が理解できなかった点は作品評価ではマイナスとなったが、彼の演技そのものは見事であった。

香川は、はっきり言って作品は糞だったけれど、気持ち悪さ全開の演技があまりに素晴らしかったので選出。


☆最優秀助演女優賞

・大賞:宮崎あおい(「怒り」)
・次点:広瀬すず(「怒り」)
   :松岡茉優(「ちはやふる」)
   :志田未来(「青空エール」)
   :岡本杏理(「インターン」)
   :鈴木保奈美(「カノン」)

主演以上に助演のレベルが高かった女優シーン。

しかし、大賞は文句なしに宮崎あおい。85年の筆頭格であり、今日へと至る若手女優のけん引役としての存在感やうまさを存分に見せつけた。所謂普通のOL役や娘役をやれないのが彼女の致命的な欠点であるが、浮世離れした役や常人と一線を隔した役を演じさせたら、今や日本一だとすら思える。

広瀬に関しては、今までの役どころと全く違う極めて困難でデリケートな役どころを見事に演じきった点を評価して。宮崎という化物が居たが故に残念ながら次点になってしまったが、間違いなく2016年の映画シーンを代表する素晴らしい演技であったと思う。

人気者でシーン最前線で居るが故に、益々風当たりが厳しくなっているきらいがあるが、個人的には彼女は「選ばれた」人物・女優であると思っている。

松岡はクイーン役での存在感やいやらしさたっぷりの演技を評価して。広瀬との対峙は、「龍虎相まみえる」に相応しい見事なシーンであった。

志田はさすがの経験が物語る演技の上手さを評価して。彼女の存在が作品をびしっと締めていたと思う。

岡本は技量的には、ここで選出した女優の中で2ランクぐらい落ちるが、思いのほかの好演ぶりを評価して。「インターン」は実質彼女が主役だったのではと、新木ファンの自分でも感じた。

鈴木はアル中で壊れた母親役での壮絶な演技を評価して。ひっくり返りながら酒瓶くらい続けている場面は、観ていて恐怖すら覚えるほどであった。


☆「思いの他良かったで賞」

・大賞:ぼくは明日、昨日のきみとデートする
・次点:カノン
   :青空エール
   :CUTIE HONEY
   :古都

これは断トツで「ぼく明日」。50点行けば上々と思っていたのに・・・。凡作でしかない原作小説を、映像をしてここまでの内容に仕上げた関係者と小松の演技に感謝。

残りの作品もなかなかに良かったので、「観ず嫌い」で避けていた方にこそ観て頂きたく思う。「CUTIE HONEY」はCGに稚拙さはあるし、展開にも突っ込みどころはあるが、「CUTIE HONEY」という作品名を考慮せず、ただの1作品として観れば、そこそこよく出来ていると思う。西内、石田ニコルのビューティー対決も良し。逆に、このタイトルをつけた関係者の無能ぶりが嘆かわしい。


・管理人特別賞

・大賞:蒼あんな・れいな
・次点:佐々木千惺(「クハナ!」)
   :佐生雪(「風のたよりに」)
   :樋井明日香(「後妻業の女」
   :中条あやみ(「セトウツミ」「ライチ☆光クラブ」)

大賞は、「古都」で昭和女優的美しさと存在感を見せつけた蒼姉妹に決定。癖があるし、今の若い子たちにはひょっとしたら受けが悪いと思わないでもないが、こういうレトロな美しさは、懐古的な作品を業界が作り続ける限り求められると思う。今後の活躍に期待したいが、頼むから業界は彼女らを大切に育ててほしいと願わずにはいられない。

佐生は新木とはまた違う美しさを見せた点を評価して。この先の活動が楽しみな新鋭だ。

樋井は可愛さと見事な脱ぎっぷりを評価して。いや、ほんとこんなレベルの可愛さ・スタイルの良さを持つ人のあんなシーンやこんなシーンが観れるとは・・・。いい時代だ。


中条は、ただ立った居るだけで画面が締まる圧倒的な美しさを評価して。魅力はあれど、まだ代表作がないのが唯一の問題か・・・。広瀬と共演した「チアダン」でどこまでのものを見せるか・・・。一つ今後の活動を占うカギとなろう。