沖縄の那覇に、「辻」という古くからの歓楽街がある。

 

 古くから遊廓として栄え、現在は沖縄有数の風俗街である。その割に、近隣はごく普通の住宅があり、そう遠くない場所に学校もある。東京などでは考えられないことである。以前ここに遊びに行ったことがある。

 

 夜の9時頃に行ったのだが、風俗街の通りには人っ子一人いない。たまに客引きがポツポツといて声をかけてくるが、この時は「BadGirls」という店に予約を入れておいたので、手を振って断るとあっさり諦める。ギラギラした脂っこさは全くない。

 

 店に入ると、手の指の付け根に小さなタトゥを入れたいかつい若衆が、丁寧な言葉で取り次いでくれた。「ことみ」と名乗る娘と会ったが、可愛いとても素直な娘だった。明るく開放的で気持ちが癒された。無論接客も大満足である。

 

 ことみに送られて店を出たとき、先ほどのいかつい若衆が「いかがでしたか?」と話しかけてくれた。礼を言って店を後にした。帰りも人通りは少なく、住宅街を縫うようにホテルまで帰った。

 

 「辻」というところには、風俗街特有の「いかがわしさ」や、「後ろめたさ」が全くない。出会う人も怖くなく、街そのものも怖くない。娘も東京と比べたら擦れてなく、情が深い感じだ。よく言われる、「女は南に行くほど情が深い」というものあながち迷信ではないと感じた。決して東京女が冷たいとか薄情だと言っているわけではないが。