なぜ、前世の恋愛物が流行るか、考えたことって、ある?
前世、その遠い、記憶にあるようなないような、もやもやした。
とおい昔。
その遠い昔に、誰かを、愛していた。
そんな恋愛物語が、多いこと。
それは、本当だから。ただの、空想の物語じゃなくて、本当なの。
神様がいつか人間が体を授かる前、人間たちに、私は君たちの神でないか?と、問いかけた。
そうしたら、人間たちは、はい!と答えたわけ。それは、ただの質問ではなっくて、誓いだったの。
忘れない。貴方を忘れない。と誓ったの。人間は。
存在を与えてくださった貴方を。
そして、アダムが生まれた。体と魂。その二つの間に立つ、不思議な生き物。人間。
天界の物は初めてそれを見た。神様は、アダムに跪くように、天使たちに命じた。
天使たちは、みんな従った。でも、一人、逆らった物がいた。今は悪魔と呼ばれる、かつては大天使だったイブリース。
貴方はそいつを土から作り、私を火から作った。なら私が上だろう?と神に訴えた。
それが、自我というものの根源だった。それまでは、天使たちはそういうものを持たなかった。
ただ、光の一部として、光の中で泳いでいたの。”私”と”貴方”という分裂がなかった。
そこに、イブリースが来て。分裂が起きてしまった。それが、不幸の元。自分を全てから切り離して見てしまった。
なんて孤独な、なんて不幸な道を選んでしまったのか。なんて不毛な、無意味な。でもそれも、必然だった。
神様はイブリースを天界から追放した。それがイブリースの望みだったからだ。自分から自分を切り離してしまったのだ。自分に単独の存在があるかのようにイブリースは自分の存在を訴えてしまったから。
でも、イブリースは出て行く前に、永遠の命をもらって行った。そして神様に、アダムの子孫みんな道ずれにしてやる。と言い残していった。
つまり、忘れさせてやる。ということだ。
イブリースは、”自分”という幻想に人間みんな連れ込もうという、魂胆だったの。
そうすれば、みんなその幻想に文字通り夢中になって、忘れてしまうから。かつての誓いを。
それが、”切なさ”という感情。
覚えているようで、思い出せない、恋人。かつて愛したひと。
時が経つにつれて、みんな忘れていった。そしてそれは、伝説として語られるようになった。(つづく)