炭酸飲料といえば? …そのむかし、ガラス瓶に入ったぺリエが好きだったんだけどな。 参加中
野を走り 山を越え 谷をくだり 河を渡り 海辺で立ちどまり
彼らは その海原の彼方の水平線を見つめ
自分たちが通り過ぎてきた時間を振り返ってみました
正義とか悪とか なんのために生きているのかとか
およそ見当もつかない答えを探り当てるわけでもなく
自分自身が今どこへ行って なにをやるべきなのか
そこへ到達できずに 時間だけが過ぎて行ってしまったのです
その足もとには
もう何億年という歳月のあいだ休むことなく
一瞬の隙も与えずに岸へ打ち返す潮騒があり 水の泡があり…
そこには その波に打ちあげられたペットボトルがありました
決して分解はされないし
迷惑にも波間を漂っても 再利用されることのない一本のペットボトル
ときどき内側にカビが生えたりしていても
なにかのメッセージや
誰かに宛てられた手紙は入っていません
ちょうど その頃 彼女自身も
「これで いつか必ず夜が明ける」と信じてきたことや
それが その瞬間が
「とても愉しい」と感じて夢中で過ごしてきたこととは別に
これまで自分が迂回したり 避けて通ってきたものが
なんであったのかを考えるようになり
それまで随分と遠回りしてきたように想いながら
自分の気持ちを自分に正直に歌いつづけていました
干ばつのつづく砂漠を歩いているような人々の
心の渇きを潤すような歌声の彼女は
ペットボトルに容れられたジュースのコマーシャルにも出演しました
ですが そんな彼らや彼女たちが
いつかどこかで安全に巡り逢うことには関係なく
ずっと長いあいだ 特定の者が特定の者を憎み 怨んで
それらを呪うだけの時間を独り過ごしゆく者がいました
10年も 20年も 何日も 何ヶ月も 何十時間も
たとえどこか肉体が不自由になっても それをやめることもなく
やがて その魂までもが 決して
どこにも解き放たれることのない重苦しい時間に阻まれ
ほぼ永遠に暗く薄汚れた場所を彷徨いつづける結末にも気づかないまま
ただただ 何かを憎み 忌み嫌い
そういった怨み辛みばかりを抱えていることを趣味としていたのです
この地球上に生きる人間として相応しい存在かどうかは
世間や学問はおろか ヒトの常識が決めることではないのに
やはり 自分自身の役割が なんであったのかも見失い
いずれ必ず自分で自分を どうすることもできなくなってしまい
なんのために 誰に必要とされた人間であったのかも忘れてしまう
それでは分解はされないし
分解されないモノは再生も不可能
何年も前に 誰か何者かによって
無造作に野山へ棄てられたペットボトルのように…
底には ときどきカビが生えていたりしても
なにかメッセージや 誰かに宛てられた手紙も入っていません