黄昏の芸能ブローカー / action 005  | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥

 
         action 005  
 
 

世の中には色々な職業があって、
日本の映像業界のスタッフ側(?)の一人、
自分の好きなことを堂々とやって
とても楽しく仕事をしている人もいた! 
・・・・・ということを発見した瞬間がある。
俺も初めて逢った時はちょっとビックリした。
「世の中にはこんな人もいるんだ」
視野が拡がった。
ここではその人のことを仮に
“芸能ブローカー”
と呼ぶことにしよう。
本人も、
「オレは芸能ブローカーだ」
と云っている。
云っているだけでなく、
やっていることも芸能ブローカーそのものだ。
 
ある日、芸能ブローカーは、
あの、人気テレビドラマ『刑事モノ・シリーズ』が
華々しくも映画化される運びとなった撮影現場で
こんなことをやらかしていた。
 

    
「あの、ちょっとしいませんが御三方、今回、映画化されたんで
記念撮影をちょっと・・・」
「?。えっ? 今ここで?」
「ええ、こんな処で申し訳ありません。ちょっと立って頂けますか?」
と、“御三方”というのは『雪の女王』の仲村さんを含め、
当時今でも絶大な人気を誇る主演の二人。その三人の、
今はなき、ファンならずとも泣いて喜ぶ3ショットである。
場所は、あの、古きよき時代の日活スタジオの食堂。
バックには厨房。
ランチタイムに終われて忙しなく洗い物をする白衣のオバサンの姿。
それを芸能ブローカーは、バッチリと、
どこから仕入れて来たとも知れぬカメラのフレームに収めた。
「ハイ、ち~ず」
カシャ。
「どうもありがとうございましたぁ」
と、それほど不自然でもない顔見知りの芸能ブローカーの、
その立ち去るを見送る三人は、また楽しげに会話し、
昼の休憩時間のひと時を過ごして、
その日の撮影も無事、終了した。
    
後日、横須賀のとあるロケ先に出没した芸能ブローカー。
「おはようございます」
彼は、今日もニコヤカに挨拶を交わす仕出しの責任者。
と、その時だった。
連れてきた仕出しとは別に、
「俺のダーツが火を噴くぜ」 
のベントレーがやって来ると、

どこからともなく駆けつけたギャラリーファンの人、一般人が、
一目その姿を観ようと波のように押し寄せる撮影現場の入口付近。
「みなさ~ん、
本日ここは映画撮影のため立ち入り禁止となっております。
機材の搬入などもあり、危険ですから、
あまり近くに立ち寄らないでくださ~い」
と、現場スタッフも普段のテレビ撮影以上に気を使う映画撮影。
それでもスケジュール多忙な主役の一人がまた、
大型バスで現場に到着し、
その僅かに開いたスモークガラスの間から
挨拶の手を振れば、
ファンも仕出しも区別なく喜んで歓迎するほどの、
ざわめき湧き立つ撮影現場。
芸能ブローカーは云った。
「お前たち早く警官衣装に着替えろ」 
 
 

       つづく 。