図面が決定して工場へ発注してしまうと、
次のイベントは地鎮祭になりますので、その間のちょっとした小噺です。
実家は6年前に諸事情により建て替えました。
その時にはすでに母(当時70代)は両方の股関節を人工関節に置換しており、歩行が困難でした。
当然、新居はバリアフリーにすべき所ですが、
なぜかそうなっておりません。
1階にLDK 風呂洗面所 寝室 トイレ 納戸とほぼ1階で生活できる間取りながら、引き戸は下レール。
母の歩行器が引っ掛かります。
そして回遊動線になっているのですが、そのせいで廊下の幅が狭い。
元々メーターモジュールではないハウスメーカーでしたので、
廊下の幅は90cm無いのですが、そこに手摺を設置すると、
車いすは通れません。
回遊動線のせいで、無駄にクランク(?直角に曲がる廊下)があり、
担架を方向転換させる事が出来ず、毎回救急車を呼ぶ度に、
担架ではなく自前の車いすを使っての搬出となり、余計な面倒を救急隊員の方にかける事になります。しかも玄関狭いし。
この状態は予想がついていたので、父に
「玄関は広くしなよ?
廊下の幅は広く取りなよ?
ダメなら廊下は極力作らないようにした方がいいよ?」
と図面が上がる前に言ったのですが、
「大丈夫だろ」と取り合わなかった父。
私の家ではないので、あまり口を出すわけにもいかず、
私は出来上がった図面を見て、これ、大丈夫なのかな?と思ってたんですけど、
全然大丈夫じゃないじゃん!?
担架が通れないから、大変な事になってるじゃん!
設計の段階で回避できた事をなんでやらない?!
2回くらい父を詰めましたね。鬼娘です。
打ち合わせに同席していた母が、足が不自由なのは見て判っているはず。
母はおしゃべりなので、自身の身の上話も何度もしたはず。
家の中で歩行器を使用しているのに、このような提案をしたハウスメーカーを
私はプロ失格だと思っています。
そんな母がつい先日、12/21に救急搬送となりました。
今年4回目の救急搬送です(前3回は転倒による股関節脱臼)
今回は自宅駐車場で転びました。
小さな段差に足かカートの車輪が引っ掛かったようです。
高齢者の人工関節は脱臼しやすく、転倒やちょっと動作でも外れてしまいます。
また人工関節は片方だけでも2kgありますから、
人体の中で頭部の次に重いのです。
転ぶと人工関節から地面に落ちます。コンクリートと金属の関節がぶつかるので、
骨盤や大転子にダメージが入ります。
今回は大腿骨骨折となりました。
なぜか24日の夜中23時すぎから手術となり、その連絡が当日の昼に来るという、
家族的には「え、手術するの?今夜?までじ?夜中に立ち会いっすか?」
な状態からの「起きてるので自宅待機でどうにか」となりました。
クリスマスイブの夜中に手術を担当される先生には、申し訳ないのを通り越して
土下座ですよ。
入院中は家族に出来る事はあまりないのですが、
退院後、このバリアフリーが整備されていない家で、どのように介助、介護をしたらいいのか。
母を見ているので、私はこの家の玄関を広く取り、1階には廊下を作らない、
2階で倒れた場合を想定し、救急隊員の方が動ける幅の階段、踏板を大きく取る事は私達の為でもありますが、救急隊員の方の動きやすさも考えた上で間取りを設計しました。
子育て世代とは、家に必要な装備が違うんですよね。
設計をしながら私は「なんか棺桶作ってる気分だわ」と思いましたが、
実際、ここが終の棲家になるので、そうなりますね。
今が一番若く健康です。
この先、出来る事がどんどん減っていく。
24時間管理人さんが在籍しているマンションで、
何かあった時、救急車の手配など頼りにする事ができ、見守りサービスもあって、
エレベーターに担架が積める十分な広さがあるなら、戸建てよりもマンションの方が
高齢者には住みやすいと思います。
でも、それは高級老人ホームなのよ。