子供の頃は多感でありながらも経験の浅さから
自分が今どんな感情を抱いているのか?

言葉にできなかったり
自分の中で理解できずモヤモヤしたり

徐々に大人になって
それが恋ゴコロだったんだ、とか
嫉妬だったんだ、とか
あるいは郷愁とか恍惚とか、
そういったキモチを表現する言葉を覚える事によって

感情を理解する。

それができるまで
つまりは子供の頃に消化できなかったキモチが
ココロの奥底で残っていたりしません?

子供の頃、夕方から夜にかけて
居間でテレビを見ていて
そう、アニメ番組なんかを見ていて

番組の終わりを告げるエンディングテーマが流れ始めると
ちょっと胸がキュンとしてくるキモチ

これってなんだろう?
なんだかよく分からないけど
きっと切ないってこういう事なんだろう?

って子供ゴコロになんとなく理解して

さっきまで学校で給食やプールに夢中になって
家に帰れば、宿題以外は特に背負う事もないような年頃の子供が

その“切ない”ってキモチを感じる曲を
「これはきっと“良い曲”なんだ」
って理解をするのにヒットチャートや他人の言葉は必要としなかった。


ボク自身の育った時代で言うと
『北斗の拳』のエンディング『ユリア…永遠に』とか
『ルパン三世』のチャーリーコーセイのエンディング(たぶんこれは再放送で見てる)とか
がそれに当たる。

その中でも特にボクの中に残っていたアニメの“良い曲”といえば

『めぞん一刻』のエンディングテーマ ピカソというグループが歌っていた『シ・ネ・マ』。

そう、今日発売になるカヴァーコンピレーションアルバム『V-ANIME ROCKS!』でボクら花少年バディーズがカヴァーさせてもらった曲です。


『めぞん一刻』といえば水曜日19:30から放送されていたアニメで
『うる星やつら』が終了してその後番組として始まってるんだよね。
同じ作者 高橋留美子先生の20代の代表作。

ちなみに余談だけど『めぞん一刻 完結篇』も『うる星やつら 完結篇』も映画で、
しかも同時上映だったんだよね、しかも響子さんもラムちゃんも花嫁になるクダリ。
見に行ったなー。
さらにちなみに『めぞん一刻』の実写版も見に行ったなー。

ボクそんなに『めぞん一刻』好きだったっけ?

当時は19:00から『ドラゴンボール』がやっていてその流れで何気なーく見てた気がするんだけど
そうね『うる星やつら』よりキャラも設定も渋いしね、子供が一発で夢中になれるような作風ではなかった。

と思うんだけど
こうやって思い出すと映画もけっこう見に行ってるし、
実家の待合室(接骨院)にも原作も全巻並んでいたし、

だいぶ好きだったんだね。


うん、さあ、さて、


ここからやっと今回のカヴァーについて話そう。


このお話をいただいたのは結構急な話で
もうすでに『Bicycle』『Bible』『トリノコシティ』のレコーディングが始まってて

締め切り日を聞いた瞬間、メンバーもエンジニアも一瞬凍った。


え? プリプロできるの? つーか他のレコーディングもパツパツなのに?


カヴァーする曲はアニメなら何でも良いと言われ

メンバー全員でいくつか出して
第3候補くらいまであげたのかな?

ちなみにボクは『シ・ネ・マ』の他に『キン肉マン』の『ブロッケンJrのテーマ』も出したんだけどメンバーにピンときてもらえなかった。

で、その中で第1候補だった『シ・ネ・マ』から許諾がおりてー

これがまた、許諾がおりるまでに時間がかかるもので
締め切りとレコの日程までのバランス!!ってハラハラしてた。

だってせっかくデモ作っても、許諾がおりませんでしたってなったら無駄になってしまうからね。


だもんで、その間にアタマの中でどういう方向にアレンジして、
どういうレコーディングをするか?をシミュレーションして

許諾がおりた瞬間から速攻デモ作り。

デモができたら速攻メンバーに渡してプリプロ。

実際、他のレコーディングも同様に
デモ→プリプロ→レコってしてたんだけど
一旦止めたもんね。

「今はとりあえず『シ・ネ・マ』に集中しよう!」って。

だもんでこの『シ・ネ・マ』のレコの思い出は
とにかく短い時間的に凝縮されていたという記憶しかない。


デモを作る段階で

ボクらの“作意”を決めなくてはいけない。

花少年バディーズはこのカヴァーで何をしたいのか?


バンドの話題作りとか、面白そうだけでやるなら
やらない方がいい。原曲に失礼だから。

ぶっちゃけメーカーの意図はちゃんとは把握してないけど
捉えようによってはこの企画自体は古今を繋ぐ音楽文化の貢献になるので
きちんとした提示がボクらには必要だと考える。

だもんで、ボクがデモを作る段階でメインにおいたコンセプトは2つ

・メロディの良さを引き立たせる。

・この名曲を現代の耳に適合したサウンド、アレンジであらためて名曲だと思わせる。

“メロディの良さ”“名曲をたくさんの人に知ってもらいたい”
これこそ、選曲の理由でもあるから当然っちゃー当然の方向性なんだけど

原曲を聞き込み、音符を拾い、コードをバラし、オリジナルのアレンジを理解し、
具体的に作っていくんだけど

ポイントとして苦労したのはやはり“構成”でしたね。

オリジナル当時のアレンジの流行みたいなのもあっただろうし
メロディをもっとしっとりさせたくてテンポをオリジナルよりおとしたせいもあっただろうけど
後半に連れて段々歌と曲が飽和してくる、間延びした感じになってくる。

歌詞が繰り返しなのも、実はコードもそんなに使ってないのも、
その要素なんだろうけど、
いや、むしろだからこそこの曲の淡々としたノスタルジックな良さがあるんだけど。

やはりフルコーラス、ずっと集中して聞いてもらえるためにどうするか?
これは悩みましたね。

歌の構成は変えてはいけないのがこのカヴァーのシバリなので
そこもハショレないしなーとか。

やー、本当に悩んだんだって!
この文章で分かるでしょ?

出口としては様々な工夫をしたのだけど
そこは無理して気づいてもらわなくても良いです。
淡々としてるようでドラマチック。
そういう成り立ちに聞き入ってくれたらいいな。

音色に関してはオリジナルの核でもあるアコーディオンが外せなくて
これはモノホンは到底無理なので鍵盤で弾いたものをリアンプしてます。
ちょっとレトロっぽくさせるにはこのリアンプはけっこう重要でしたね。

あとはボクの弾いたアコギ(Martin D-28)とピアノ、
そして琢磨の弾いたトレモロギター(枯れ男)、
この3つを綺麗に並べて奥行きを作った。

トレモロはVOXのアンプに内蔵されてるトレモロ。
アコーディオンとの掛け合いとかユニゾンのプレイだね。

アコギもピアノもそうだけど実はオリジナルにはない音色なんだけど
実にマッチした。

リズム隊に関してはボクがデモで作るものより
よりグッと良くして仕上げてくるのでさすがだなと。
それこそ後半の盛り上がりはあのベースのうねりまくりフレーズがなかったら成り立たないもの。

あと、歌だねー。
これは貘が超頑張ったんじゃないかなー。
プリプロでも何度もやり直してたし
本番レコもかなり集中してくれた。

特にサビフレーズのリリースの仕方は
オリジナルの歌い方に引っ張られそうになるけど
今回はそれとは違う歌い方をボクが要求したためにけっこう苦労したみたい。

ハモリもオリジナルにはそんなになくて
新しく作ったんだけどこれも難しかったね。
綺麗に効果が出る場所をいろいろ試した。


からのー、ミックス。

これはライダーに苦労させたね。
スケジュール的にもだけど。

音数の少なさとこのテンポ、
そうやっぱり間延びさせない音像の作り方、

最後の最後にバスドラの音量をがちっと上げた時、
何かが見えたね。

みんなで いいね! ってなったもの。


とまあ、短い期間の中でも
かなりこだわり抜いたレコーディングでした。


こうやってあらためて聞いてみると
非常によくできたサウンドになったと思います。

なんつーか、珍しく繊細さが滲み出てる。
原曲を傷つけてはならねーという配慮からかな。

言うなれば、

少し古くなってしまった歴史的重要建築物を
リフレッシュさせてもらってしばらくは保存が利く処理をしてあります。

って感じ?


きっと、今回のこのアルバムの収録曲の中では
もっとも歴史が古く、それこそ初めて聴くって人も多いんじゃないかと思うけど。

冒頭にも述べたように

良い曲は誰が作った?とか
誰が演奏しているのか?とか
どのくらい売れたのか?とか

そういうものは関係なくて
耳に入った瞬間に「これってきっと良い曲!」って思わせる事ができるかが重要だと思いますので
ボクらはそういう音楽を作って行きたいと思いますし。
作っていると思うのでぜひまずは聴いてみてちょうだい!

アルバムはちょっとなーって人は
dwango.jpとかで単曲で配信してるからぜひぜひ。


では最後に

この曲のオリジナルを作ったピカソの皆さんと作詞者の大山潤子さん
この曲に出会ったきっかけとなった『めぞん一刻』の原作者 高橋留美子先生

に敬意を感謝を込めて、ありがとうございました。


あと、そうそう、

もしタイムスリップできるなら

当時、居間のテレビの前で『シ・ネ・マ』を聴いてジ~ンってしてる少年のボクに


「キミはその曲を大人になったらカヴァーするんだよ!」


って教えてあげたい。



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