土手の上のシルエットの主は初老の男性で


切れ長の目と優しい笑みをたたえていた。


何故かしら私には彼の姿がこの世のものでは


ないかのように思えた。


彼を包み込む穏やかなオーラは


今まで感じたこともないほど私を


落ち着かせ安心させてくれる。


“この人に全て委ねなさい。”


心の底からそんな声が聞こえてくる。


私は静かにうなづく。


「それじゃ私は行くよ」


シルエットの主はそう言うと天を見上げ


ゆっくりと立ち上がった。


空からなのか?空気の中に出来た光の柱が


彼の体を包んだ。


それはまるで彼の体を中心にして


光のトンネルが空に向かって


出来たかのように見えた。


「ありがとう。」そう言って男は


私の方を見て、再び微笑む。


そして、ゆっくりゆっくり空のほうへ


吸い上げられてゆく。


私は驚くこともなく、ただ、じっと男の姿を


目で追っている。


それは、あまりに崇高であまりに美しい瞬間だ。


私は感動で涙が溢れるのを止めることが


出来なかった。



 いつの間にか男の姿は光り輝く美しい空へ


吸い込まれるように消えていった。


静かだ・・・。時間が止まっているようだ。


私はベンチに腰を下ろし、暫く男が消えた空を


見上げた。体を心地良いぬくもりが包んでいる。


「あぁ、良かった。」私は幸せだった。


そのゆるやかな時間を聞き覚えのある声が遮った。


「翼。覚えてるか?


おじいちゃん、よくここ散歩してたな。」


うん。


僕、おじいちゃんと手をつないで歩いたよ。


帰りにおじいちゃん、


アイス買ってくれるんだ。」


声がする方へ振りかえるとそこには


孫の真太郎とひ孫の翼が手をつないで立っていた。


二人は全く私に気づく様子もなくベンチの横を


通り過ぎて広場の方へ降りて行った。


「そうか・・・このベンチは・・・


天国へのプラットホームだったんだ・・・。」


う分かった瞬間、私の体を目がくらむほどの


光が包み込む。


「ありがとう。ありがとう。ありがとう・・・」


私はエレベーターに乗っているように


空へと登ってゆく・・・意識がゆっくりと・・・。