ショートストーリーも4作目です。
この物語はフィクションです。
著作権は筆者に帰属します。
転載はしないでください。
ベンチ
町の真ん中を流れる大きな川の河川敷の土手に
そのベンチはあった。そこは春から夏にかけ一面、
緑や野の花に覆われ美しい。
太陽は四方から降り注ぎ柔らかい空気に包まれる
まさに市民の憩いの空間である。
この川沿いのマンションに暮らす私は
会社を定年退職した後、いつの頃からか
その辺りを夕方に散歩するのが日課になっている。
川面を渡る風が頬を撫で、河川敷にある広場では
子供たちがはしゃぐ元気な声が聞こえてくる。
ここをゆっくり歩いていると自然に元気になる。
嫌なことがあってもいつの間にか笑顔になった。
そんな散歩には、もうひとつ楽しみというか
不思議に心惹かれることがあった。
それは、私が散歩していると必ず、
土手の上にあるベンチに仲良く並んで座る
二人の老人の後姿を見かける事だ。
私が散歩する川沿いの遊歩道からベンチまでは
20mほどの距離があるので二人が毎日、同一の
人物なのか?確認することは出来ない。
しかし、二つ並んだ白髪まじりの薄くなった頭は
同じような年格好の人物を容易に想像させた。
加えて、私がこの二人をいつも同じなのでは?
と思ったのには理由がある。
ただベンチに座っているだけの
二人のシルエットが実に魅力的なのだ。
それは、支えあっているようでもあり、
手を握っているようでもあり、
後ろからなので、もちろん、はっきりとは
分からないが、妙に一体感のある姿なのだ。
そして、私だけが感じることかもしれないが
その姿はぼんやりと光っているようでもある。
そんな不思議な後姿に私はすぐに魅了された。
そして、さすがに毎日、見ていると
「二人はどんな関係なのかな?」とか
「どんな話をしているんだろうか?」と色々な
疑問が沸いてきた。
そのうち、二人の素性を考えることが私の密かな
楽しみにさえなってきた。 ・・・続く