翌日、未明のうちに起床した。窓外は真っ暗で、寒い。防寒具が必要である。



阿里山の御来光は有名とのことで、展望台のある祝山まで阿里山駅から朝1本だけ列車が走る。もしバスしかないなら寝ているが、4:20の発車を目指して起きられた。



阿里山駅は既に改札前に長蛇の列ができていて、帽子や手袋を売る店も煌々と明かりを点けている。私は筆談で窓口に並び、祝山線の往復切符を買った。150元だった。



裏道・横道の王道


裏道・横道の王道

構内ではディーゼル機関車が入れ替え作業をして、編成を仕立てている。阿里山駅自体もスイッチバックの構造で、嘉義方面と祝山方面の列車が同じ方向へ出発してゆく。本線とは反対側には引込み線があって、真っ暗な中を係員が走り回ってポイントを切替え、側線に並んでいた車両が機関車に押されて構内に入ってきた。



裏道・横道の王道

裏道・横道の王道

昨日乗った車両は全席前向きのロマンスシートだったが、今朝は通勤電車タイプのベンチシートである。通路が狭いので前のお客さんとの距離が近い。乗客は中高年ではなく、若い男女のグループが多い。今朝は月曜日の朝なのだが座席はほぼ埋まっている。最後尾に機関車、客車を4両つないで、また機関車、さらに4両の客車という不思議な編成で、扉は手で開くタイプである。



まだまだ真っ暗で、外の様子はわからない。途中で停車したかと思ったら逆進し始めた。スイッチバックを繰り返しながら、標高2216mの阿里山駅から2451mの祝山駅までさらに200m以上も高度を稼ぐ。



裏道・横道の王道

4:48祝山駅着。

祝山駅は立派な駅で、屋根のかかるホームはしっかりとしたコンクリート作りであった。改札を出るともう階段で、2489mの祝山まで歩き始める。駅構内の階段を出るとこざっぱりとした展望台がある。しかし、ここが目指すべき場所ではないようで、人々はさらに歩いている。私もその波についていくと頂の上に立派な展望台があった。



既に明るくなってはきており、東の空に赤みが差している。

太陽が上がるのを待っていると、拡声器を使って何かを叫んでいる人がいる。うるさいと思って相手にしていなかったが、台湾の人々は笑っている。私は言葉がわからないので呆然とするばかりだが、この展望台の関係者らしい。駅から展望台まで、メガホンを持った案内人がいて、御来光拝みに来た善男善女たちを誘導していたが、その一人であるようだ。



私としてはここにいるのも、列車が運転されるからだけであって、熱心に朝日を見たいわけではない。帰りの列車がすぐさま発車してくれれば、それに乗って帰ってホテルで妄一眠りしたいところだし、なんだかお腹の調子もよからぬ風情なので、早く帰りたいのだけれど、阿里山行きの列車は6:00発の1本しかなく、まだ5時である。

仕方が無いから、朝日の一部始終を見ざるを得ない。



しかし月曜日というのに、大変な賑わいである。土日はもっと賑わうのかもしれないが、週頭の平日にもかかわらず、大きなカメラを持った人から小さい子を連れた親子連れもいる。




裏道・横道の王道


裏道・横道の王道

御来光は恙無く終了し、すっかり明るくなった道を駅に下り、トイレへ行く。トイレはきれいで清々しかった。



帰りの列車は往路に比べると空いている。祝山から阿里山のホテル街まではハイキングコースがあるので、朝の散策をする人たちがいるのであろう。



裏道・横道の王道

私はホテルに帰り、ベッドに倒れて8時にまた起き、再び阿里山駅へ行った。昨日は曇っていたけれど、今朝はすっきりと晴れており、高地の涼しさも相まってまことに気持ちがよい。駅は山肌に接しているので、ホームから阿里山の町の方向を見ると、緑の山にむき出した岩肌が見える。




裏道・横道の王道


ホテルをチェックアウトすると、“シーユーアゲイン”と言う。もう一度来るのかどうかはわからないが、“再見”と答えた。



裏道・横道の王道

帰りのバスは観光バスタイプの大きな車だった。現地の爺さん・婆さん、一見して旅行者とわかる日本人の二人組みを乗せ、9:10阿里山を発車した。バスは“新中横公路嘉義玉山線”を走る。阿里山森林鐡路の線路とは違った谷筋を下ってゆく。バスの道筋からは多くの茶畑が見える。あれが阿里山高茶のブランドになるのだろうか。急斜面を利用して栽培されていて、日本の台地上での大規模なそれとは大きく違った。



裏道・横道の王道

汽車が4時間かけた嘉義から阿里山を2時間あまりで下りきり、11:20嘉義駅前に帰ってきた。まとわりつく暑さに閉口した。



私は駅の裏側(後站)を歩き回り、12:14発の自強号で彰化へ向かった。



裏道・横道の王道

ただ、12:00の阿里山行きがある。昨日私が乗った一本前の列車である。もう一回阿里山森林鐡路のホームへ行き、発車を見送った。いつまでも車内に入ろうとしない私を見て、駅員が乗るのか?と手振りをするので、私は大きく手でノーを示した。

阿里山行きの扉は閉まり、ディーゼル機関車が煙を吐きながら嘉義駅を発車した。この列車が阿里山に着くのは時刻表どおりなら16:02である。


裏道・横道の王道

<阿里山森林鉄路 了>