当社の人事評価制度は、経営陣でもなく人事部でもなく、一般社員が創っています。毎年全社員の中から「評価改定委員会」のメンバーが選出され、そのメンバーが1年かけて来期の評価制度の見直しを行います。この委員会の議論に、私は参加しません。翌年の評価は、見直された評価に従って査定されます。その査定により給与が決まる仕組みです。
この制度は3年前から始めたのですが、当初は「社員に任せて、評価基準が甘あまになったらどうしよう」とか「人件費が想像以上に増加したらどうしよう」と内心不安でしたが、やってみたら、選抜されたメンバーがしっかり議論し、しかも公正な評価基準を創出してくれて、まったくの杞憂でした。
携わったメンバーによれば、みなさん自分が代表して議論をしていることをしっかり自覚して委員会に参加していたといい、その分いい加減な議論はできないと考えていたといい、それを聞いた私は「当社の社員はなんてすばらしいんだ!!」と自画自賛していました。
今ではこの仕組みは4年目を迎え、もうすっかり「社員が自分たちで給料を決める」会社になっています。
この仕組みの良いところは、まず委員会のメンバーが手挙げ制で、「給料に不満がある人が直接給料体系を変えられるところ」。逆に「不満があってもそれを公表しない人は不満を解消するチャンスを自ら放棄していることになるんですよ」というメッセージを発することもできる。これを始めたことで、「ただ不満を言う人」はだいぶ減ったように思います。
そして社員自ら評価基準をつくることで、「当社社員のモデル像」がくっきり浮かびあがってきました。評価基準は具体的な行動に落とし込んでいるので、「こういう行動をすると評価される」ということが具体的にわかります。社員が考える良い行動を重ねることで、評価が上がり、給料が増えていく。これを続けていけば、皆が自然に「当社の中での模範的な行動スタイル」に近づけていけると思っています。
ただ私が考えるこの制度の一番のメリットは、ほかにあります。それは「成長が可視化できること」です。
この評価基準を使って、四半期ごとに全社員が評価ミーティングを行います。評価ミーティングごとに、自分が以前よりも何ができるようになって、その結果給料が上がっているというのが目に見えるので、自分の成長をじかに感じることができる。それがこの制度の一番の長所だと思っています。
最近は「この会社に居ても成長を感じられない」と退職をする新卒社員が多いと聞きますが、それは成長を感じられないのではなく、「成長を感じる仕組みがない」だけなのではないかと思います。仕事をすればなにかしら経験をするはずで、その経験値が乗る分、成長していないはずがありません。それを自分が見えるような仕組みがあれば、本人も納得して頑張るのではないかと思います。
当社の評価制度は、現時点の評価をするためのものではありますが、「これから目指す成長の姿をみせるもの」でもあります。実はこちらのほうが大事なのではないかと、最近は感じています。
来期の評価体系は、毎年12月の社員総会で発表され、翌年3月まで社員説明会を繰りかえし、4月から施行されます。来期の体系が今期からどうバージョンアップされるのか、総会での発表が楽しみです。