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三寒四温な日々

Twitterに続きblogをはじめてみました。大喜利や、短めの物語を書いたりしていこうと思います。宜しくお願いします。

休日、彼女と朝からテレビを見ていた。既に、三時間以上になる。朝起きて早々にスイッチを入れ、情報番組から旅番組、短めのニュースを挟んでのバラエティー番組へと突入していた。

途中、何度もリモコンに触れポチポチと見たい番組を探していたようなのだが、スイッチを消すことはなく、チャンネルを数分置きに変えたりして、全チャンネル総動員で、彼女は納得のいく番組を探したりして見続けていた。

流石に僕は飽きてきていた。情報番組は、グルメコーナー以外は何とか楽しめたが、旅番組など興味もないし今見ているバラエティー番組も、テレビに映るタレントはデカイ口を開けて笑っているが、何が面白いのか理解に苦しむ状態。
彼女も黙って見ていて、背伸びなんかしながらも見続けていた。


昼食は僕がラーメンを作り、昨日の残りのご飯とで用意した。
ラーメンライスを食べながら、バラエティー番組を見続ける二人。
『スズーッスズーッ』と麺をすする音が部屋に響く。

昼食が終わり、眠気もくるが未だテレビを見ている彼女。この際、テレビと付き合えばいいのに、何ても思ったりしていた。

僕は余りの暇さに紙と鉛筆を隣の部屋から取ってきて、茶の間のいつもの席に再び座った。
彼女は何だろう?という目をしていたが、直ぐテレビに目を戻し、今やっているクイズ番組のクイズについて頭を働かせている様子だ。

僕は、そんな彼女の横顔を描くことにした。描きたい気持ちが決してある訳じゃない。暇すぎる、余りにも暇すぎることから、辿り着いた答えが『絵を描く』ことだったのだ。なので、自分の意思とは裏腹なものだが、描くからには少しでも上手く描いて、彼女の気を引こうと企んでいた。

絵を描き始めて早四十五分、ゆっくりと丁寧に描いていることから、未だ三分の一しか出来ていないが、何となくでも雰囲気は出ている。上手くいっていることに満足し、ニヤけてきた。

彼女はトイレに一度行ったが、早々に戻ってきて、チャンネルをポチッと押して二時間ドラマの再放送を見ていた。この番組は殺人事件のシリーズもので、人気があるようだが、僕は毎回似た展開に飽き足りていた。

二時間ドラマが決着する頃、絵は完成した。正直、切りがなく何処かで落とさないと延々いって仕舞いそうだから、終えることにした。
終わったとたん、尿意を催しトイレに行って戻ってきたら、テレビは消えていた。

『あれ、もう見ないの?』
漸く消したと思い、心にもない言葉を発していた。
『それより何これ?』
手にとって僕の描いた絵を見て言った。
今日始めての、まともな会話に思えた。
『どう、上手い?』
いつもの席に座り、上目遣いに聞くと思いがけない言葉が返ってきた。
『これ、私だったら最悪だよね。目がすんごく離れてるし此れはないよね』
『そうかなー』
僕はショックを受けていたが、悟られるのが嫌だったから、無理に明るい声で返した。
描いた絵を手に取り、言われてみればとも思ったけど、僕はやっぱり彼女を描いたのだ。本心を伝えたい、でも言いづらい、嫌悪されて仕舞うのではないかと不安も過る。

『実は、この絵はね…』
絵を、クシャクシャにしながら続けた。
『テレビに出ていたタレントのTでーす』
彼女は少し驚いた様子で、クシャクシャにした絵を開いて呟いた。
『似てないよ、全然似てないよ』
僕は惚(とぼ)けた顔をして、テーブル横にある飴を食べようとしたら、彼女は制止し迫るように顔を近づけ聞いてきた。
『ねえ、本当は誰なの?私でもないタレントのTでもないでしょうし、ホントの事を言って』


二人で飴を食べた。
僕は、その間ずっと喋られずにいた。
彼女と思って描いた絵は、違うことになって仕舞い、機転を利かそうとタレントの絵では似てないと否定され、どうしようものかと、探していた。
答えを変えた方が良いのか、或いは言われた通り、ホントの事を言った方が良いのか、タレントの名前を出すのは止そうとだけ決めていた。

彼女が急にボソッと言った。
『今日も終わっちゃうね』
僕は未だ舐め終えていなくて、そんな彼女の言葉を聞いて『呆気ない一日』とも聞こえた。殆どをテレビで費やした一日。僕だって同じ気持ちだ、でも口には出さないでいた。

彼女が席を立とうとしたとき、舐め終えた飴の甘い吐息を香らせて、あの絵についての返事をした。


あの絵を描いてから三日後、僕は一人になっていた。
憧れの同棲生活は、半年持たずにして終わることになった。

今日の昼は焼きそばと、昨日の残りのご飯で焼きそばライス。
テレビを消し、沈黙の中黙々と食べ続けた。
午後は、気分転換に外出をしようと決めていた。


外へ出ると、暖かい日差しが照り付けてきた。季節以上に暑くも感じた。
歩きながら、僕は何故、あのような答えを言ったのだろう?自問自答を繰り返すが、今のところ答えは見付けられないでいた。
何時か分かるのだろうとも思えるし、意外と早く見付けるかもしれないとも思った。何だか、あの生活には隔たりがあったのかもしれないと、今振り返ってもいるから。

心の何処かで、別れたくて言ってしまったのか、或いはあの頃の自分が出てきてしまったのか。

公園に着き、ベンチに座ると子供連れの家族が砂遊びをしていた。
葉桜が風でざわめく。

砂上の楼閣か…。

『この絵は元カノだね。描いてたら似てきちゃった』

彼女は元カノの顔すら知らない。
当の本人、僕もこの絵が元カノに似ているとは、到底思えなかった。


あの返事は、心の声だったのか。
今は分からない。
僕はベンチに座って、子供が作っては壊すを繰り返す砂山を黙って見ていた。