「付き添いの方はここまでです。待合室でお待ちください」
通路の途中の自動ドアの前で看護師が言う。彼女が手に持ったカードでロックを外すと自動ドアがするすると開いた。
自動扉を抜けると急に空気が変化した。それまでの病棟の空気に有った雑多な人間臭さが無くなって人工的に清められた空気。不愉快ではないけれど、微かに薬品の臭いが入り交じっている気がする。
「空気が変わりましたね」
「そうですか?」
彼女たちにとってはこちらの方が日常だから気づかないのかなと思う。
手術室の有る階に向かうエレベーターに乗り、次にドアが開くとそこは数メートルも幅がある廊下。その左右には大きく数字の書かれたステンレスの扉がいくつも並んでいる。
勝手な思い込みで手術室ってのは病院に1つしかないなんて思ってたんで少し圧倒される。
その内のいくつかのドアの前には、髪の毛を覆うプラスチックの帽子を被ってマスクをした看護師たちが立っていて視線を投げてくる。
猛獣
の檻の前に引き出されたウサギ
の気分。
「こちらです」
看護師について自分が手術を受ける手術室前につくと、やはり数人のプラスチック帽子を被った看護師が立っていてにこやかに迎えてくれる。
「今日の手術を担当する○○です」![]()
「同じく××です」![]()
「同じく△△です」![]()
案内してくれた人も含めて4人。
二十代(と思う)のオペナースに周りを取り囲まれるプチハーレム
状態なんだけど微妙に嬉しくない。
「これじゃぁもう脱走できないですね」
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「出来ないですねぇ~」![]()
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笑い声が上がる。
続く