午前五時。
ぐっすり寝たんだけれどさすがに夜が明けてすぐに目が覚めた。手術開始は午前中だけどまだまだ時間に余裕がある。
だからって、もう一寝入りするほどの精神的な余裕はない。
朝の健康観察。体温正常。血圧正常。他に異常を感じるところもなし。
気持ち的には小学校で予防接種を受けたときに似てるかな。
体育館に並ばされて問診票のチェックを受けてるときの気持ち。
不可のスタンプが押されることを期待しながら待っていたのにさらりとチェックをすり抜けて注射器を持った学校医の前に進まされたときのガッカリ感。
もう腸の中には何も残っていないと思うんだけど最後のトイレ。
出ない。
小の方は少し出たけど、全身麻酔が行われたところでカテーテルを入れられるから問題ないだろう。
やがて手術の時間が近づいて手術室の看護師が様子を見に来た。
手術着に着替えさせられて最終チェック。
金属製の物を身に付けていたり虫歯がグラグラしたりしてないか。
呼吸器を気管に入れることがあるので虫歯があったりするとヤバいらしい。
「手術室までは歩いていきます」
ドラマなんかだとストレッチャーに横たわって天井の照明が流れていくのを見てる様子なんか出てくるけど自分で歩いていくんだ。
これって別の患者が来ちゃったりベッドで身動きできないままで手術をされたりしないようにする意味も有るのかな?
手術室からの迎えの看護師が現れたところでタイムアップ。映画なら
「知事から執行停止の命令書は間に合わなかったようだね。残念だけどお別れの時間だよ」
って所か?
(いや、それは死刑執行だ)
続く