ジョン・ケージの4分33秒の少し前の1949年、イヴ・クライン(1928-1962)という「画家」により、交響曲「単音-沈黙」という音楽作品が発表されている。


イヴ・クラインは「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」という深い青色で特許を取得し、晩年その色のみで芸術活動をしたといっても過言ではない。(晩年とはいえ彼は34歳で没している)

上記はれっきとしたクラインの「作品」である。


「人体測定」シリーズ。

イヴ・クラインは柔道の達人で、1952年に来日して西欧人として初めて四段を取得している。

来日時に見た原爆による「死の人影」が、この「人体測定」シリーズに影響を与えている。

友人のクロード・パスカル。

作曲家のパスカルとは同姓同名だがおそらく別人。


交響曲「単音-沈黙」は20分間の単音の持続と、その後20分間の沈黙による無音時間が続く。

持続音は単音でも良いが、コードでも良い。

この単音は、下記クライン自身の言葉によると、単色と等価であり、音響化したもの」であり、沈黙の経験を「満たされるもの」に変換するための準備だという。


この作品の発表時、クラインは20歳だった。


下記は作曲家の川島素晴さんのサイトからの引用。

川島さんはこのシンフォニーをフルサイズで実演したことのある世界でも稀少な1人。


<クライン自身による、本作に関する語録抄>

「音の部分は、聴き手が、沈黙の経験を満たされるものに変換するための準備をしている。この2部分は、可視と不可視の間のアーティキュレーションの、正確な置換となっている。単音は、絵画における単色と概念的に等価であり、それを音響化したものである。」


「この交響曲で私は、自分の人生がどうあるべきかを表現した。(中略)40分間のこの交響曲では、その始まりと終わりが引き伸ばされ、奪われ、めまいと、時間の外への憧れの感覚を生み出している。このように、その存在の中にあっても、この交響曲は存在しない。それは、存在した後に生まれもしないし、消滅することもないので、時間の現象学の外に存在している。しかし、私たちの意識的知覚の可能性の世界では、それは「沈黙ー聴こえる存在」である。」

川島さんによる実演。