中勘助著、「銀の匙」。


これを聞いてピンとくる方もいるかと思う。


名門、灘高校で50年にわたって国語教師を務めた橋本武先生の授業では教科書など使わずに、この「銀の匙」だけを3年間とにかく読み込むというものだったという。


橋本武先生が師範学校を出た1930年代には、公立学校に皆勤めたく、灘高校(当時は灘中学)のような私立は少しランクが低く見られていたらしい。


しかし他に空きがないからということで橋本先生は灘高校に務めることになるが、この授業を始めてから灘高校からは東大合格者が続出することになる。


詳しくは橋本先生のインタビュー記事に譲るが、正に日本が誇る伝説の国語教師である。。

橋本武さん


2013年に亡くなられるまで、橋本先生は100歳を超えても教壇に立ち続けたという。


先日の記事で触れたジャズサクソフォン奏者の渡辺貞夫さんやクラリネットの北村英治さんで驚いてはいられない。


「銀の匙」、読み始めてみた。


夏目漱石が「美しい」と称賛した文体。

中勘助の若い頃の作品ということだが、明治の日本のその場所に一気に連れて行ってもらえるようなさりげない臨場感がある。


少しずつ読み進めたい。

国語力というのは全てに通ずる信念のもとに、橋本先生がどんなことを教えたかったのか想像しながらゆっくり読むのは楽しい。



音楽の勉強も、たくさんの曲を練習してレパートリーを増やしていくことは必要だが、高校3年間、大学4年間で一つの作品を常に研究していくというもう一つの軸があるとどうだろう。


もちろん教師の質によることは言うまでもないが…。