西原理恵子さんの「ぼくんち」。


見開き2ページで1話完結する。

その後続きが描かれることもあるが別の話にいくこともある。


今の時代から考えればあり得ないと思われることが多々描写されているが、高知県出身の西原さん自身の幼少の頃の経験を元に描いているということなので、実際にあった昭和の港町なのだろうし、今はないとは知らないので言い切れない。


これを久々に読みながら、僕は以前学生の時に読んだ時と同じ気持ちになった。


自分は「ぬるま湯」で生きている。


それが悪いというわけではなく、ぬるま湯で生きられる環境に産んでもらえたというだけだ。


マンガの中、厳しい環境で育つ子供達はぬるま湯で生きる者たちよりも早く大人にならねばならず、主人公のお兄ちゃん一太くんは、小学校高学年か中学生くらいで1人で自活する道を選び、ガソリンの窃盗などの「仕事」に従事する。


ちなみに学校に行くという描写はないため、おそらく行ってない。


我々の価値観から見ると劣悪に映る環境の中、当の本人たちは日々の生活で見つける「小さな幸せ」を糧に逞しく生きる。


しかしそこに無駄な美学はない。

西原さんのシンプルなイラストで、そういう世界もあるということが淡々と描かれる。


一太くんがある時期お世話になる当代一の不良こういちくんの、「僕たちは神様が許してくれるまで生きなければいけない」というセリフに深く考えさせられた。


ちなみにこのマンガは2003年に実写化されている。


実写映画の主人公は一太くんのお姉さんかのこさん、90年代後半に「ナースのお仕事」で大ブレイクした観月ありささんが務めている。


映画の中では麻薬や命に関わる描写はあまりなく、だいぶマイルドになっている。