演奏研究3年生、グループが入れ替わりながら5週ずつ繰り返すが、今日から新しいグループ。


ここ数年は現代音楽を扱っているが、毎回どこかマイナーチェンジを考える。


今日から新グループ。


現代音楽を考える前に、音楽史における新たな様式とその需要、許容について考える。


1600年近辺、オペラの出現で必要になったモノディ様式によるアリアにより、ルネサンス時代の無伴奏合唱曲をはじめとするポリフォニー(多声音楽)から、ホモフォニー(和声音楽)が産声をあげ、バロック時代の萌芽となる。


ラモーによる「和声論」がまとめられるのは1722年なので、そこから100年以上経つのだが、その頃には1685年に生まれたバッハやイギリスでブレイクしていたヘンデルは円熟期を迎え、1714年にはバッハの息子エマニュエル・バッハも生まれ、音楽は新しいフェーズに入っていく。


ちなみにバッハについては、ポリフォニックな技法を極め続けた人で(なんといっても遺作と言われるひとつは「フーガの技法」)、ホモフォニックな音楽を書いたというイメージもなければオペラを一曲も書いていないという点から、バロックを象徴する作曲家でありながらバロック音楽を象徴していない。


そんなバッハが没した1750年がバロック時代の終焉とされ(ヘンデルは1759年没なのでまだ生きているのに)、和声がベースに敷かれた調性音楽を用いて、ソナタ形式をはじめとする形式という名の「テンプレート」が整っていったと考えられる古典派の時代は、1732年に生まれたハイドン、1756年に生まれたモーツァルトが天才的な閃きと労作により栄華を極め、1770年に生まれたベートーヴェンの最初の交響曲(1800)であっさりとその伝統を打ち破り、最後の交響曲(1824)では次の時代の一つの象徴でもある「音楽と文学の融合」を見せる。


1789年に端を発したフランス革命によりヨーロッパ世界が激変する中、前時代までに整えられた「調性音楽」を用いて、自由になった音楽家たちは各々の「感情の発露」を音楽の中でドラマチックに遠慮なく展開していく。


19世紀は丸々ロマン派音楽の時代といわれ、それはクラシック音楽の黄金時代ともなった。


そして20世紀を目前にした音楽家たちは、飽和した音楽から新たな音楽を見出すために、音楽の三要素、正しくは調性音楽における三要素である「メロディ」「リズム」「ハーモニー」を手放さなければならなくなる。


世の中はあちこちで近代兵器を用いた戦争が繰り広げられ、第一次世界大戦が準備されていく。


同時に時代の転換点にいた音楽を享受する人間たちにとっておそらく初めて対峙することになる、「許容への懐疑」の時代が到来する。


「音楽の三要素を消失した音楽」は、おそらく当時の人間たちにとっては、恐怖だった。


しかしながら、1913年の初演が狂気に満ちパニックに陥ったストラヴィンスキーの「春の祭典」は、我々にとっては既にカッコいい音楽だ。


それから111年が経過している。


音楽の時代の変遷からいくととっくにそのサイクルは次の時代へと移っていてもおかしくはない。


アヴァンギャルド(前衛)という語ももう過去の遺物だというのは誰も疑いようがない。


この100年は、100年後にどんな時代と言われているか、そして今はどんな時代なのか。


何を許容し、何を許容できていないのか、精神を研ぎ、耳を澄ませて今を俯瞰する時が来ている。