昨日の話の続きになるかもしれないが、高校の頃だったか、夏目漱石の「こころ」に教科書で出会った。


授業など真面目に聞くタチではなかったが、なんとなくずっと印象に残っていた。


それはやはり、Kという謎のイニシャルを持つ登場人物と、遺書を書いた先生の存在がぼんやりと心に残っていたのだろう。


大学3年の時、初めてのコンクールを受けにミュンヘンに飛んだ時、旅の共に持って出たのが「こころ」だった。


ミュンヘン国際コンクールの一次で見事に散った僕は、残りのミュンヘンでの生活を「こころ」とビールとコンクール鑑賞に費やした。


観光は一切していない。


「こころ」が書かれたのは、明治の名将、乃木希典が明治天皇の崩御と共に自刃したという事実について、漱石なりの肯定、レクイエム的な要素があったと伝えられる。


ここからは持論が大きく占めるかもしれない。


「先生」の自殺も乃木大将の死を知ってのことだった。


小説の中に出てくるキーパーソン、先生の奥様は「静」という名前だった。


乃木希典の妻は静子だ。


そして乃木希典が自刃を覚悟したというのは日露戦争での戦死者の多さの責任をとって、そして何より西南戦争の折に、官軍の連隊旗を敵である薩軍に奪われたという屈辱からと言われている。


明治天皇は、自分が存命のうちは死ぬなと乃木を諭したという。


そして薩軍に討たれ死に、連隊旗を取られてしまった少尉こそ、河原林雄太だ。


この河原林こそ、「K」なのではないかというのは乱暴すぎるだろうか。


乃木の妻、静子は乃木が腹を切り終えた後、乃木の遺志に背くように自決している。