「受胎告知」がテーマとなった絵画が好きだ。


このテーマは長い歴史の中で多くの画家が描いてきて、どれも素晴らしく興奮、涙ものだが、冷静に見ると少し疑問がある。


このシーンは神の子の妊娠を告げる大天使ガブリエル、聖母マリアが、時には精霊や神が描かれる場合もあるが、マリアは常に白人で描かれる。


フラ・アンジェリコ(1390-1455)

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)

エル・グレコ(1541-1614)


イエスはユダヤ人なので、母のマリアもユダヤ人のはずだ。

ユダヤ人の祖先は、実はアラブ人と同じと考えられている。

旧約聖書には、アブラハムが奴隷の妾に産ませたイシュマエルの子孫がアラブ人、正妻が産んだイサクの子孫がユダヤ人ということになっている。

イエスも絵画の中では白人風に描かれることが多いが、おそらくは母子ともに我々が想像するアラブ人と同様の様相だった可能性が高い。


まあ絵画自体の芸術的価値にはなんの影響もないし、どちらがどうとか言うつもりは毛頭ないが、なぜそうなっていったのかはやや気になる。


旧約聖書でダヴィデがやっつけてしまうゴリアテはペリシテ人と呼ばれる民族だが、実際には同書でユダヤ人の「約束の地」とされる「カナン」の先住民族だった。


パレスチナは、ペリシテが語源となっているようだが、どうやらユダヤ人によってカナン人と共に追い出されてしまったというのが史実のようだ。


リサイタル前に余裕だねと思われるかもしれないが、バッハを学び直せばキリスト教を学び直し、ユダヤ教のことも考えねばならない。


話は戻るが「受胎告知」には本当にたくさんの作品があり、どれもバリエーション豊かで面白い沼である。