近衛秀麿(1898-1973)。


兄は内閣総理大臣を務めた近衛文麿。

愛称は「おやかた」。


「近衛」という名字からもわかるように、藤原北家の血筋を次ぐ五摂家筆頭の貴族の子孫であり、明治になってからは公爵の称号を与えられ、天皇の血統を持つ由緒正しき華族として本人も子爵の爵位を持つ。


雅な平安文化を脈々と継承してきた公家の末裔ではありながら、秀麿は指揮者、作曲家として、日本でオーケストラを組織して西洋クラシック音楽の普及に生涯を捧げた。


1925年に山田耕筰と共に結成した日本交響楽協会は日本最初の常設オーケストラ。

色々あって山田と袂を分かち、新交響楽団と改称することになるが、これは現在のNHK交響楽団の前身となる。


この「色々あって」の部分を含めて、秀麿とオーケストラを巡る生涯の物語はまるで権謀術数渦巻く平安貴族のご先祖藤原家と重なるところがあり、面白いので興味のある方はぜひお調べいただきたい。


この近衛秀麿が遺した「越天楽」というオーケストラ作品がある。


元々は平安から伝わる雅楽であり、当然日本に古来から伝わる楽器を使って演奏される越天楽を、オーケストラで演奏するという編曲作品。


通常のオーケストラ編成になんとソプラノ・サクソフォンが一本含まれる。


聴いていただけるとわかるが、まるで雅楽。

秀麿の才能を肌で感じることができる傑作。


越天楽。