僕は自分の母校を誇りに思っているし、そこで教わることが叶い、雲井雅人の弟子を名乗れることを何よりの糧に生きている。


そのアイデンティティは一生ブレることはない。


また、それとは別に楽器を始めたばかりの自分の圧倒的な目標となっていた方もいる。


それは生身の人間というより、CDやテレビや雑誌の中の人で、烏滸がましくも、「こんな風になりたい」という漠然とした思いだけが、どんなに道を踏み外しそうになっても、自分を音楽に繋ぎ止めてくれたような気がする。


僕はその方に習ったことは一度もない。


しかし、自分の生徒達の何人かはいつの間にか深くお世話になっている。


ある日その方は酔っ払って、「堀江くんは半分弟子みたいなもんだからさ」とその方にとっては何気ないひと言が、僕は涙が出るくらい嬉しかった。


今日はその方が僕の生徒達を見るためだけに、休日を一日空けて名古屋まで来て下さった。


未来というのは想像や目標や夢の斜め上からやってくる。