名古屋フィルハーモニー交響楽団首席打楽器奏者の、窪田健志氏のリサイタルに伺った。


前半はなんとティンパニのみの演奏。


こんなにティンパニの音を聴く時間は生まれて初めてだ。


しかし段々と、ティンパニという楽器の奥深さを感じると共に、会場に充満していく倍音のような響きに酔っていく。


狙っているのだ。

彼はそういう男だ。


後半、一転ピアノとティンパニのための小品で調性音楽を一瞬響かせたと思ったら、二台のピアノと打楽器のためのソナタで、バルトークワールドに生き埋めにされる。


命からがら終演の拍手に包まれると、アンコールに用意されたバーンスタインのマンボで憔悴した心に鞭を打たれ、高揚の絶頂に最後はティンパニで奏でられるサン=サーンスの白鳥で窪田氏の世界に浸らされ、圧倒的な幸福感で幕。


狙っているのだ。

そういう男だ。