ドミソのミの音が絶望的に合わない音律は、多声のハーモニーには向かなかった。
そこで圧倒的な調和、倍音へと目が向けられたのではと考えられている。
倍音とは一つの音の振動数の整数倍の振動数をもつ音で(実際には厳密な整数倍ではない)、理論的にはその一つの音に対して無数に存在するが、中世世界では、まず第5倍音であるドミソのミの存在が認められ、採用されたのではと思われる。
(実際に倍音が数学的に研究されたのは近代になってから)
振動数が少ない音、つまり低い単音をピアノなどで弾いた場合、訓練次第ではその基音の中から第16倍音くらいまでは聴こえるようになる。
このミの音は、平均律から考えると13.7セントも低いのだ。
ピタゴラス音律から考えると22セント近く低いことになるので、ほぼ1/4音くらい違うことになる。
かくして、無事に三和音ドミソは美しく協和することができた。
これが、純正律と呼ばれる音律だ。
しかしこの音律も壁にぶつかることになる。
和声や調性音楽、鍵盤楽器などのデジタルな楽器(音高が定まった楽器)が発展してくると、純正律で調律した場合、まったく転調ができないのだ。
たぶん続く。。