音階の歴史は紀元前800年の古代ギリシャに遡る。


最初は下降形だったらしい。


万物は引力によって下に落ちるのが自然とのこと。


これがキリスト誕生を跨ぎ、キリスト教の広がりと共に、中世と言われる時代には聖歌が誕生する。


いわゆるこのグレゴリオ聖歌を彩っているのが、教会旋法というもの。

この中にあるイオニア旋法は、後々の長音階、エオリア旋法は後々の短音階として生き残り、調性音楽が発展し、その他の旋法は廃れていってしまうというのが、一応の音楽の歴史だ。


しかし、なぜこのイオニアとエオリアが生き残ったのかというところが、どこかピンときていないところが自分の中にあった。


さまざまな本を読んでも、なんとなく核心をついていない気がしていた。


しかしそれは今日氷解した。


イオニア旋法は「ドレミファ」と「ソラシド」という、まったく音程関係が同じ構成の4つの音がくっついたもので、その4つの音は最後の部分(ミ→ファ、シ→ド)が半音で昇りやすくなっていて、メロディに適していること。


そして音階の中で重要な主音(1番目の音)、下属音(4番目の音)、属音(5番目の音)の上に積み上がる三和音が、全て長三和音であり、この長三和音は、低次倍音(第一倍音から第五倍音)のみで構成された非常に心地良い自然な和音であり、音階の構成として和声的にも優れていること。


これらの理由で、まずイオニア旋法が生き残ることになる。


ではエオリア旋法はというと、音階の構成にもイオニア旋法のような規則性はない。


しかし、主音、下属音、属音の上には、見事に短三和音が積み上がる。


イオニア旋法とは全く反対の性格を持った音階だったということなのだ。


乱暴な言い方をすれば、イオニア旋法のアンチテーゼとして生き残れたと言っても言い過ぎではないかもしれない。


しかしこのままでは和声的に解決しにくい(属和音→主和音)ため、7番目の音が上げられ、導音が人工的に作られた。【和声短音階】


ただこれでは6番目の音と7番目の音が増2度と広く、メロディが作りにくいため、6番目の音も人工的に上げられた。【旋律短音階】(3番目の音以外は長音階と同じ)


そしてこの旋律短音階は、下降してくる時は自然短音階となって降りてくる。


そう、万物は下に向かっていくのが自然な形だから。


長調と違い、短調は理論的に不完全というのをたまに目や耳にするが、その理由もわかった気がした。


音は生き物だと、著者は述べている。


池辺先生、ありがとうございました。