波多野江莉さんのユーフォニアムリサイタルに行ってきた。


波多野さんは、僕が明和高校音楽科に専任教員として着任した時の3年生だった。


彼女が卒業して2年後、東北の震災の年。

暗く沈んだ日本、そして音楽界に何かできないかと、大学生の波多野さんたちとMeiwa WIND Groupを立ち上げ、音楽の力を信じてコンサートを行った。


Meiwa WIND Groupはそれからほぼ毎年、規模を小さくしたスピンオフコンサートも含め、公演を続けてきた。(現在は休止中)


あれから10年、立派な音楽家に成長した波多野さんは、自分の教え子たちが演奏の機会を奪われ続けていることに胸を痛め、立ち上がった。


31歳、初ソロリサイタルだ。


1曲目、フィリップ・スパークのコンチェルト、最初の音を聴いた瞬間、彼女と気持ちが繋がった気がした。


涙が溢れた。


彼女に心の中で強く叫んだ、「君はまだ泣いちゃダメだ…!」


最後まで飽和状態の音色には一分の隙もなかった。


最後の曲が終わった時、僕は心の中で「もう泣いていいよ」と言った。


ステージに出てきた彼女はすぐに泣いた。


僕も泣いた。


アンコールを終えて終演。


こんなコンサート、初めてかもしれない。


後ろを振り返ると、彼女の師である露木先生と目が合った。


「先生、とてもいいコンサートでした。」


と言うと、


「ね、気持ちの伝わり方が凄いよね。」


と仰った。


僕だけではなかった。


客席には錚々たるプロの面々、そして彼女が愛する生徒たち、そして多くの応援団。


この10年、彼女がいかに人と音楽を愛し、人と音楽から愛されてきたかを感じた。


波多野、本当におめでとう、そして本当にありがとう。


君の言うように、音楽は物凄い力を持っていたよ。