大島真寿美さんの「ピエタ」を読んだ。


ヴィヴァルディが音楽教師を務めたことで有名な、イタリアはヴェネツィアに実在したピエタ慈善院を舞台にした物語。


「ヴィヴァルディ先生が亡くなった…」というセンセーショナルな冒頭で始まるこの物語は、孤児として育ったエミーリアが語り部として、同じくここで育ち、天才ヴァイオリニストとしてヨーロッパに知れ渡った実在のアンナ・マリーアを中心に進行する。


大島さんの文体は、舞台がバロック時代のヴェネツィアではなく、同時代(江戸時代)の名古屋だと言っても違和感がないような、なんとも粋な日本語で彩られている。


テンポも良く一気に読めてしまい、爽快で温かく、かつ敬虔な気持ちにさえさせられる。


ほとんどがフィクションであろうが、綿密な取材と勉強で当時の世の中を生々しく描き出した、名著。