伴奏ピアニストという存在は生徒たちが思っている以上に重要な存在で、自分の価値観を一変させる力を持つ、絶大な共演者なのだ。
僕は学生時代、最初にお願いしたピアノ伴奏者は、大学の飲み会で見かけたきれいな女の子だった。
いきなり楽譜を渡して、これお願い!といった具合で、ナンパなんて洒落たもんではなかった。
そのピアニストとは今でも付き合いがあり、2年前には十数年ぶりに共演をして頂いた。
大学2年の頃、作曲科の同級生がわざわざ希望してくれて、伴奏をお願いすることになった。
彼はどんな音楽も瞬時に性格を見極め、デフォルメして弾いてくれるので、こちらも最初からシビアになりすぎず、音楽そのものが持つ性格にダイブするような感覚があった。
大学院に入り、その2人も卒業してしまった時に、今NHK交響楽団でオーボエを吹かれている和久井仁先生(当時愛知県立芸大専任講師)が、コソッと「この前レッスンに伴奏で付いてきてくれたあの子、めちゃくちゃうまいぞ」と教えてくれた後輩がいた。
彼女には、初めましての挨拶と共にその年の初ソロリサイタルの伴奏をお願いした。
僕はこの人達に大きく育てられたとはっきり言える。
伴奏者同伴でのレッスンが多くなっているこの時期、生徒の演奏がみるみる変わっていくのを感じ、共演ピアニストに心から感謝している。