情報の氾濫によって、世間からかえって知性が失われ、思考が停止しているように思える。この世の中に、情報だけで解決できることは、ほとんどない。「知は力なり」の名言で知られる、かのフランシス・ベーコンも、「テクノロジーと哲学が統合されて、はじめて情報は活きてくる」と語ったように。


これは僕の言葉では全くなく、最近ある本を読んでいた時の一節で、ドキッとした。


何かあればネットを頼り、ネタ元もわからず盲目的にそれを信じてしまう昨今の現況は、耳が痛くもある。


「ネットに書いてあったんだけど」というフレーズは、我が家では争いの種になりうるのでいつしかNGワードになっているかもしれない。


五嶋みどりやマイスキーを知らない高校生たちが多いことを最近になって知り、驚いている。

専攻に関係なく、音楽と共に生きていたら当然出会うはずのことに出会っていない、もしくは気付いていないというのは、その他に出会ってしまう多くのことに埋もれてしまっているのであろう。

何も高校生に限ったことではなく、きっと僕も気づかないうちに、埋れさせている大切な情報はあるはずだ。

情報を選び、時間の使い方を決めることは、今を生きる我々に求められている大切な資質なのかもしれない。


しかし、五嶋みどりを知らないのに、「タングルウッドの奇跡」の映像を知っている高校生は多いのにも驚いた。

僕はおそらく小学2年生くらいの時にリアルタイムで知ることになったか、その後の報道で知ったか定かではないが、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。

あれが単なる音楽における珍しい好プレーではなく、強靭なメンタリティを備えた14歳の天才少女が起こしたまさしく奇跡的な現実であることを、少年ながら肌で感じたのは、今の子達も同じなのだろう。