これまでのお話↓

【楽典】ドレミはどこからやってきたのか 音律の話

1[音楽という教養編]

2[ピタゴラス音律編]

3[純正律編]

4[近代の音律編]


【楽典・音楽史】音楽に色はあるのか 音階と調の話

1[古代ギリシア編] 

2[グレゴリオ聖歌と教会旋法編]

3[聖ヨハネ讃歌編]

4[機能和声と調性音楽編]

5[全調はいくつ?編]

6[音楽に色はあるのか編][雑談 合奏指導の思い出]

番外編 これまでのこぼれ話[短音階編][調の色編][ファの由来編][センポウ編]


【演奏研究】潜在能力を呼び起こす 即興演奏の話

1[自由の解放編]

2[お題縛り編]

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[五音縛り編]

怪しげな地下プロレスの決まり手のようなタイトルがつきましたが、今回は僕の大好きな世界、「五音音階」の魅力を堪能してみて下さい。


普段馴染みのある長音階や短音階は1オクターブの中に7音が所属する音階(ドレミファソラシ)ですが、五音音階というのは、1オクターブが5つの音で構成される音階です。

この五音音階はペンタトニックスケールとも言われ、世界中には数多のペンタトニックスケールが溢れています。
(ペンタとは、ギリシャ語で5を表す言葉です。アメリカ国防総省はペンタゴンと言われますが、建物が上から見ると五角形だからですね。ちなみにヘキサorヘクサは6を表し、昔「クイズ!ヘキサゴン」というテレビ番組がありましたが、あれは元々六角形に配置された席にパネラーが座ってクイズに答える番組だったように記憶してます)
アメリカ国防総省

その中から、今日は堀江お勧めの5種類のペンタトニックスケールをご紹介します。

そして、その5種類のペンタトニックスケールの音を使い、即興的に何か演奏してみて下さい。

テンポや拍子、リズムは自由です。

アップテンポでもスローテンポでも、好きなように5音を駆使して、自由に演奏するのです。


ではまずはこちらを、下から順番に演奏してみて下さい。


音域は問いません。

弾きやすい、吹きやすい音域で、移調楽器の人も、自分の楽器のドレミで構いません。



どうですか?

ドレミファソラシの長音階から、4番目のファと7番目のシを抜いた音階、ヨナ抜き長音階と言われる音階です。

世界的には、メジャーペンタトニックスケールという名前のスケールと同じで、スコットランドの音楽にもよく使われる音階です。

元々スコットランド音楽の「蛍の光」もこの音階で作られてます。

ソードードドーミーレーードレ ミレドードーミーソーラーー

ですね。

新しいところでは、星野源さんの「」の前奏なんかもメジャーペンタトニックです。(恋ダンス踊れます!)


奥深く、どこか懐かしい感じのする音階です。

この音だけ使って演奏してると、どこかで聴いたことのある、知ってる童謡が聴こえてくるかもしれません。

でも、絶対に知らない曲です、何せ今あなたが即興で演奏した即興童謡曲に他ならないのですから。


次はこちら。



勘のいい人は、「ハッ!」なってくれたかもしれません。

これは先ほどのヨナ抜き長音階が、短音階になっているヨナ抜き短音階です。


これはお箏の調弦の一つである平調子と同じ音程関係で並ぶ音階でもあり、下から早く弾けば雅なの雰囲気が味わえると共に、ゆっくりとこの5つの音を紡いでいくと、どこかで聴いた演歌が、日本の魂が蘇ってくるのです。

ぜひこの機会に、お祖父様やお祖母様に、自作の即興演歌をご披露してみませんか。


そして和物が続きますが、



実はこれ、②のヨナ抜き短音階を、ソの音から弾いたのと同じ音程関係なのですが、どうでしょう?

グッと江戸感が増しませんか…?

不思議ですよね。
教会旋法もそうですが、使ってる音は一緒なのに、始まる音と終わる音が違うだけで、印象が変化します。

人間の耳は曖昧なもので、そこが面白いんだと思います。

この音階は都節音階と言います。

なんか文字面だけでコブシが効いてきそうですが、最初の半音進行からの長3度進行が、なんとも艶っぽさというか、色気すら醸し出すように感じます。

ぜひ様々な音の配列や長さを工夫して、即興江戸恋物語を演奏してみて下さい。


そしてこれも日本の代表的な五音音階。



弾いた瞬間、ピンとくる方もいるのではないでしょうか。


そう、これは琉球音階です。

沖縄民謡をはじめ「ハイサイおじさん」、「島唄」などのヒット曲もこの音階がベースです。

アップテンポなら、

などの付点のリズムで遊ぶと、それっぽくなりますよ。

「島唄」のように、アツイ即興沖縄バラードを歌い上げるも良しです。


最後はキングオブペンタトニック(僕の中で)



どうでしょう。

どんな印象を受けるかは人それぞれだと思いますが、なんかちょっと、


カッコよくないですか…?


これは、①のメジャーペンタトニックに対して、マイナーペンタトニックスケールと言います。

別名、ブルースペンタトニックスケールと言われることもあり、ジャズやその前身、ブルースの音楽の中で使うと、最高にカッコいいのです。(僕の中で)

ちなみにこのマイナーペンタトニックがベースとなり、


ソ♭が間に入った、ブルーススケール、またはブルーノートスケールなんて言われる音階が生まれます。
(♭がついたミ、ソ、シの音のことを「ブルーノート」と言いますが、本来ブルーノートとは、黒人音楽の中から生まれた、平均律のピアノでは出せない、4分の1音くらい低めに、「ブルー」になる音と言われてます)


弾いたり吹いたりしてみると、一気にジャジーなムード満載になりませんか…??


今夜はジャズマンになりきって、ご自宅の夕食を即興ブルースにてムーディーに演出してあげてはいかがでしょうか。
あ、朝食には向いてないかもしれません。

ちなみにこの音階は、

スウィングと言われる、さっきの付点より少し緩めのこんなリズムを使って演奏してあげると、それっぽくなるかもしれません。



五音音階、普段使っている7音の音階より、雰囲気や色が濃く出るような気がしますよね。

この世界観が、僕は大好きなのです。

ぜひ、このペンタトニックスケールたちで、休校中たくさん遊んであげてもらえたらと思います!


遊んでくれた人、遊んでみた動画をTwitterのDMでお待ちしてます。(本気)

続く・・・・・

次回
即興演奏完結予定

付録
伝説的なブルース歌手ロバート・ジョンソン