まだ考えがまとまっているわけではないが、最近ずっと考えていることがある。
今さら?と思われるかもしれないが、バッハの小プレリュードBWV924-943の作品群としての分け方、そして真作偽作問題についてだ。
まずは分け方について。
私の再生リストは、9つのプレリュード、6つのプレリュード、5つのプレリュード、という形で3つに分けている。(5つのプレリュードについてはこれから)
9つはBWV924-932、6つはBWV933-938、5つはBWV939-943という分け方になっている。
9つのプレリュードはセットで作曲されたわけではないが、ヴィルヘルムフリーデマンバッハの音楽帳に含まれている、同じような長さ、難易度のプレリュードたちだ。
6つのプレリュードは、元々セットで使おうという意図で作曲されたわけではないかもしれないが、エマヌエルが「6つの小プレリュード」と書いていることから、教育目的でセットで使われていた可能性が高い。
5つのプレリュードは、943以外については、ケルナーの手稿譜によってのみ伝えられる曲群だ。943は、ケルナーの弟子であるヴォルフガングニコラウスメイの手によるものだ。
問題はここからだ。
924-930、939-942、そして999をまとめて「12の小プレリュード」と呼んでいる曲集を見たことがある人も多いだろう。
これは、19世紀前半に平均律クラヴィーア曲集が大ヒットした後、ペータース社から出版される際にまとめられたと考えられている。
前述からお分かりいただけると思うが、作曲した時点ではもちろんセットではないが、平均律のようにハ長調→ハ短調→嬰ハ長調→嬰ハ短調、というように調性順に並べようとした結果、このような括りになったと思われる。
しかし小プレリュードには調号が5つ以上の曲が存在しないのと、元々そのような意図で作曲されたわけではないため、かなり歪な並びになっている。
924 ハ長調
939 ハ長調
999 ハ短調
925 ニ長調
926 ニ短調
940 ニ短調
941 ホ短調
927 ヘ長調
928 ヘ長調
929 ト短調
930 ト短調
942 イ短調
かなり無理やりな空気があるが、12(1ダース)というキリの良い数字でキャッチーさを狙ったのだろう。
999はリュートのために書かれた曲だが、ケルナーが鍵盤用の2段譜で書き写していたことと、ハ短調が抜け落ちていた中で、この曲が長さも難易度もちょうど良かったために選抜されたのだろう。
そしてここからは真作偽作問題だ。
924,926-930についてはバッハの自筆譜が見つかっている。
925,931,932については、フリーデマンの筆跡のものが見つかっており、音楽的にもフリーデマン作という可能性も考えられている。
しかし、大バッハが編纂したフリーデマン帳に含まれているということは、大バッハも作曲に少なからず関わっているのではないかと私は思う。
933-938については、自筆譜こそ見つかっていないが、前述した通り大バッハの次男であるエマヌエルや、弟子キッテルなど、証言者の信頼性が非常に高く、音楽的に考えてもバッハ真作として間違いないだろう。
問題は939-942だ。
これらは前述の通りケルナー写本によってのみ伝えられたものだ。
ケルナーは非常に熱狂的なバッハファンであり熱心なコレクターだったが、帰属情報の信頼性が高くないと言われている。さらに、これらの写本にはJSBという、バッハを連想させるイニシャルが書かれているものの、これまでにもJSBと書かれていながら偽作であることが判明した作品もあり、後世の研究では作者表示として十分な証拠にはならないと考えられている。
音楽的に考えても、バッハらしくないぎこちなさや単純さ、不自然さを感じる。
一方、943については真作と考えられている。
これについては、別の手稿譜が存在したと言われたこともあったが、現存はしていない。
しかし、音楽的に考えると、緻密で無駄のない美しい対位法であること、展開の仕方など、バッハらしい要素が揃っており、真作と考えられている。
もっと詳しく調査して、また皆さんに報告できればと思っている。

