新版 日本語教育事典より

日本語教育と方言 499ページ


以前、方言について3回にわたり、それがもたらす差別について書きましたが、今回は日本語を母国語としない人を対象に方言を教えるというハードル高めの問題。

標準語を学んだ方が、次は住んでいる地域の環境に馴染むためなどの理由で方言を学ぶ際、どのような方針で教えるのか。

その流れを示した図がある(ここでは一部モザイク処理しています)。


擬似標準語教育――――外国人が「カタス」と聞いて「片づけるの意味だろう」という推測が可能なら日本語教育での「特別配慮」は要らないが、それが不可能な場合はこうした「擬似標準語」を理解語彙として教える必要がある。


方言理解教育―――次に外国人と話す場合ですら方言を使う人が多い地域では、これ以外にも普通の方言に関する教育が必要になる。学習者はその方言が理解できるだけでよいと考えている場合が多いので、そうした場合は「方言理解教育」で十分である。


方言使用教育―――さらに「方言使用教育」 に踏み切った場合でも、解決しなければならない問題がある。標準語という概念の具体的な中身(語法,音声,語彙など)は決まっているが、たとえば大阪弁を教えようと思っても、河内・船場・北摂・泉南のさまざまな下位変種から教える変種を選択しなればならない。また、 標準語と違って方言の教材は非常に少ないため、教師自身が作成しなければならないことが多い。







一部モザイク処理しています。

図では既存の教材があるか?に対して「はい」と答えてから方言使用教育に行く流れだが、本文にもある通り方言教材なんて実際の現場で使いものになるレベルのものは無いに等しいだろう。
その地域語に詳しい日本語教師を探すのも大変になる。
本が読めるなら図書館で郷土資料を当たり、日常生活で言葉を覚えるのが一番無難なような気がするのだが…。


教える方も、教わる方も一筋縄ではいかないようだ。