以下は『日本語辞書学への序章』の一幕であるが、明らかに新明解国語辞典 第四版(第四刷)の語釈について一刀両断している。
しかし、ここに書かれていることは至極真っ当である。


―引用はここから―
たとえば、「マンション」を「スラムの感じが比較的少ないように作った、鉄筋のアパート式高層住宅」とし、「動物園」を「生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕えて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設」とするのは客観的な定義とは言い難く、どう見ても編者の解釈である。右のマンションの記述は編者の体験によるものだそうであるが、現今のマンションはスラムという語の持つイメージとはかなりの隔たりがある。また、動物園についての記述は、動物園の一面をとらえていて、そのことに編者が批判的であることは理解できるし、読んで面白いが、全世界の動物園がこうした加虐的な施設として説明されるべき存在とは思えない。

辞書に編者の思想や世界観が反映することはあり得るが、基本的には、辞書の記述は中庸を旨として、バランスの取れた記述を心掛けるべきである。