夕方、約束までに時間があったので文具店に入った。

広い店内を回っていたのだが、

一カ所だけひとり通るのがやっとの狭い通路があり、

丁度そこにはおかっぱのOLが立ち止まって棚の商品を見ていた。

特にこちらを気遣う様子もなく突っ立ったままなので、

私は少しイラッとしつつも出来るだけ素早くスマートに、

その女性客とすれ違おうとした。

…しかし狭い。頭に「ファイト一発!崖っぷち編」のCMが浮かんだ。

こりゃファイトやスマートどころか、

壁にへばりついたおっさんが、必死にカニ歩きしている風情だった。

やっとの思いで入れ換わり、最後の一歩に弾みをつけて踏み出した瞬間、





ブッちィィー!!

あ?………


スーツのボタンが壁の小さな隙間に引っかかり、そのまま引きちぎれてしまったのだ。

ボタンは床にいきおいよく転がり、あっと言う間に棚の下に吸い込まれてしまった。

こりゃたまらん。無愛想な女をよけるために、とんだ目にあってしまった…。


店員を呼び、奇跡的にこんなマンガみたいな事態に成ってしまった、

悪いけどボタンを出してくれと頼んだ。

店員たちはワッセワッセと巨大な棚を動かした。

よけた棚の下を見て私と店員一同、わっと叫んだ。


ボタンが何十個も山になっていたのだ。



もしかすると、さっきの女は、この文具店に住みつき、

サラリーマンたちにいたずらをする

座敷わらしOLだったんじゃ無いだろうか。
それは朝のラッシュアワーで起こった。



…見えたのだ。


…つり革を持ち、窓の外を眺めていた私の隣にそれは現れたのだ。


まさか!

見える筈はない。…それは視界の外にあるのだから。

最初は勘違いだと思った。しかし…感じるのだ。


私の右目の、右端の、

右端の端の、

そのまた最後の右端の、

いちばん右端っこの、

ぎりぎり一番右端視覚細胞の一個が、そのイメージを捉えたのだ。

…私の真横より更に後ろに有る、その「ふくよかなもの」を…。


あの角度は、明らかに視界の外のはずなのに…

なぜか見えた気がしたのだ。


しかも、それはかなり露出した状態で有ることさえ、私は確信していたのだ。


オレはペレか!!と叫んだ。

若い方には馴染みがないですが、ペレとは往年のサッカーの神さまです。

当時あまりのプレーの凄さに、視界の広さが人間離れしていると言われていた天才だ。



なんでこんなに見えるんやろ。…それとも、ひょっとしたら私のホッペタの細胞が、

私に喚起されて一時的に視力を持ったのかも知れない。



…しかし困った。どうやって確認しようか…。


ようするにしっかり見たいんだけど…。


では目玉だけ真横にギョロッと動かして見てはどうだろうか。

いやいやいかん、そんなことをしたら、その瞬間に、前に座ってるOLにさとられ、

「フッ、いま見たわねオヤジ」と不潔オヤジに成り下がる確率はかなり高い(すでに心はそうなのだが)

そんな冒険、痛風を抱えた身では出来ん。


かと言って、このタイミングで吊り広告を見る振りをし…

「え~っと、なんか無いかな~。ほぉアバターかあ。見たら鬱になるって?」

などと首を大げさに巡らせたら、ますます不自然で白々しい。



…ああ!くっそぉ!

見たいっ!見たいっ!むっちゃくちゃ見たいーっ! 見なければ一生後悔するぞ!


…そう云や、映画で「欲望と言う名の電車」と言うのが有ったな。


この状況とは全く関係のない格調高い映画だったと思うが…。



…よしっ!こうなったら、きっぱり男らしく真っ正面から見てやろうやないかい。


私は意を決して首をぐわしっと真横に向けた。


…おっほお♪やはりそうだったか(嬉)


聞け!皆の衆!!思っていたものは、思っていた通りだったぞ! ビジネスマンよ立て!直感を信じろ!


悦に入った私がふと我に返って見たらば、

そのまた向こうのオッサンもじぃ~~っと凝視しているではないか。


おお?向かいのオッサンまで!じぃ~~…と。


あかんこいつら最低や。あのオッサンらは、まさしく私の姿やないか…。


朝からすんません。


シェー!の世界-CA3A0030001.JPG
どう?この靴♪安かった割にはイイでしょ?



シェー!の世界-CA3A0028.JPG
靴をカッコ良く見せる写真って難しいですね。



ところでこの靴、どこの靴かと見てみたら…、


























シェー!の世界-CA3A0025.JPG
タケゾー…

( ̄○ ̄;)


はア?なんじゃ?コレ。


「KENZO」とは違う。
だが「タケオ・キクチ」とも違う…。
おまえは誰や!?

( ̄□ ̄; …