『おくりびと』と、『プリンセス トヨトミ』についてもちょっとだけ | なんやろのブログ

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『おくりびと』と『プリンセス トヨトミ』。


たまたまこの時期に見たので2ついっぺんに感想(内容の感想というよりはたぶんその周辺的なこと)を。『プリンセス トヨトミ』はたぶん文句だけ(^ ^;)。


『おくりびと』、このお正月のTV放送では視聴率がふるわなかったみたいだけど、自分は見れたのでよかった。(録画してるひとが多いのかな?or 正月からこんな映画…とか、まだ心に開いた穴が埋まってないのにこんな…というひとが多いのか。)


わたしは、『おくりびと』は映画館でやってたときには確かあまり関心がなく、アカデミー賞をとったとかでマスコミが騒ぎだしてからたぶん少しだけ興味が出て(父とその話をした記憶がある)、2009年秋だっけ、最初にTVでやったときは、父が病死してまだ数カ月後だったので、とてもじゃないけど見る気分になれなかった。


見る気分になれたってことは、わたしの場合はもうだいぶ父の死を受け入れられたってことかな。


肉親の死は一般的に辛いことだと思うし、親友や恩師の死もそうかもしれない。


正直「恩師」と呼べるほどの関係ではなかったけど、それに近い先生(博士課程の指導教官)が、昔授業中によく話していた。歳をとってくると身近なひとがどんどん亡くなっていき、葬式ばかり行っている気がする。不思議なもので、周囲に当たり前のようにいたひとがそうやっていなくなってくると、まるで自分のまわりの空気が薄くなってくるような気持ちになる。確実に、自分の一部もなくなっていく、と。


その先生も、60歳になるかならないかのうちに病死されてしまった。授業や読書会でそういう話をしきりにされてた頃から(ハイデガーの思想では人間の死の理解の仕方が非常に大切になるから――ただし、普通の日常語を超えた語り方での理解になってしまうけど――そういう話を避けて通れない)、ほんの数年後のこと。


先生が亡くなったときはショックだった。いろんな意味で。そして先生の無念さを思ったら、遺志を継がなければという気になった。(実は今も日々新たにそう思っている。)


先生の死の約3年後に父が死んだ。この2つの死は重い。でも、やっぱり肉親の死は全然違うもんだなぁと実感した。


話が映画から逸れてるんで、映画に戻して…。


『おくりびと』は確かにいい映画、うまい映画だと思ったけど、それほど感動はしなかった。もし感動(心に響くとか、心に突き刺さるとか、心を揺さぶるとか…)を期待するなら、ちょっとはずれかな。でも、「いい映画」を見たいときには、間違いないです。あと、山崎努さん、かっこええです、あの役のキャラ。


テレビ放送だと、放送用にカットされてなかった?っていうのが不安で、特にラストは突然終わってびっくりしたんですけど。まぁ、生と死のコントラストで幕ってことかな。


『プリンセス トヨトミ』もそうなんですけど、テーマがはっきりしてて、しかも(たまたまだけど)共通してますよね。「父になること」とか、「父であることの難しさ」みたいな。父と息子の確執、愛、和解。


要するに…男目線の映画だなって思いました。

(別に、女目線じゃないからってケチをつけるつもりはないです。両性ともにバランスよく、ってなかなかできないですもんね、自分自身がどっちかに寄ってるわけだから。)


『おくりびと』に出てくる女性は、なんかかわいそうというか…いや、美しいと言うべきなのかな(心構えのあり方が)。


ストーリー: 小林大悟くん(←本木雅弘)はたぶんひとりっこで、幼少期は家族3人、山形の田舎で平和に暮らしてた。チェロなんかも習わせてもらってて一瞬は幸せそう。でも、両親の不和からひねくれ者に…ってほどでもないが、自分と母を捨てて出て行った父親に対する恨みをかなりくすぶらせたまま成長。店をやって女手ひとつで自分を育ててくれた母の死に目に会えなかった(チェロ奏者の演奏旅行で海外にいたため)罪悪感をどこかに抱えながら、東京で嫁(←広末涼子)と幸せに暮らしている。でも、失業してしまったので、嫁と共に故郷の山形の田舎町へ転居。たまたま募集見つけて面接行って、即採用された会社の仕事が納棺師で、嫁には大反対されるし、幼馴染の地元公務員、山下(←杉本哲太)からも同様。大悟くん、どうする?(ネタバレ云々関係なく、以下パス。)


この話に出てくる女性: 大悟の嫁さん(ある種理想的な嫁像かも?)。大悟の母(背景として)。会社の事務のおばちゃん(←余貴美子)。山下の母で銭湯をひとりで切り盛りしてるおばあちゃん(←吉行和子)、など。


大悟も山下も、男の子は仕事持って嫁もらったら(母親目線からすれば)冷たいというか、巣立つってそういうことだろうけど。2人の母親(たぶんどっちも孤独死)がかわいそうに思えてしまう。でもそれは、母親のキャラにもよるんだろう。親子でコンセンサスがとれていればどっちも幸福だと思う。ただ、大悟や山下みたいな残念なパターンが多いのが現実なのかもしれない。「もっと大事にしていればよかった」「もっとたくさん一緒に話して、笑って、互いに理解しあえたらよかった」「もっと恩返ししてあげればよかった」「看取ってあげられればよかった」みたいな形で死なれると、残った者には、罪悪感とか、後悔の念が生まれてしまう。


映画では、たぶん想像するに、大悟の母親は、大悟がチェロ奏者という夢の仕事で伸び伸びと活動していて、そのために自分(母)を顧みる間もないのだから、わが子の成長ぶりに満足して死ねただろうし、山下の母親にしても、銭湯経営という自分の世界でしっかり生きていて、火葬場のおっちゃん(←笹野高史)との信頼関係なんかもあったわけだから、そんなにまずい老後でもなかっただろう。各々死ぬべき運命のときにひとは死ぬわけだし、いつどのように死ぬにしても、死ということ自体はみなに平等に来るわけだから、死をめぐって悩むことになるのは、結局いつも残された(or 残されるであろう)側の心の世界。肉親の死をいかに乗り越えるかは大きな課題だと思う。


事務のおばちゃんが大悟に「お願いだから、お父さんのお葬式に行ってあげて」みたいなことを言った場面は正直むかついたが(笑)、大事な場面ではあった。おばちゃんも子を捨てた人間で、子を捨てた側にはそれなりの事情があって、決して子を愛してないわけではないんだよ、ってことを大悟にわかってほしかったのはわかるけど。結局、大悟くんは、父に捨てられた=父から愛されてない(父の顔も思い出せないほどに、記憶消去)、というのが結構傷になってっぽいので、葬式に行って、しかも納棺師としての仕事もできて、父の愛を確信できたこと(石文で)は、その傷を癒やすのに不可欠なステップだった。それを知っての強引さだったのかなぁ。



…と、だいぶ長くなってしまったので、『プリンセス トヨトミ』(映画)については少しだけ。(前に原作本については感想 を書いたこともあるので。)


この映画は、原作を読んでから見ると、かなり失望します。(失望しました。)


ほんとはこれ映画館でやってたときにすごく見に行きたくて(演者さんがみな好きだし、なにより舞台であるらしい大阪の街が大好きなので!)、でもお金もあんまりないし我慢してて、せめて原作だけでも…と思っても、本買う余裕もないし(だいたい1日食費もあわせて最大贅沢で1000円くらいの生活してるので)、図書館では予約多数で借りられないし…というときに、本を貸してもらったので、まず読みました。本は、感想にも書いたように、おもしろかったです。


変えられていちばん腹立ったのは、松平さんのお父さんのキャラ設定。


今も文庫が手元にあるので確認すると、例えばp.199~。映画の父子関係はなんか真逆という感じ。松平さんの父親は権力欲に取り憑かれた官僚で、完璧な超エリート、人間性は「?」みたいなひと。松平さんと母親を捨てて仕事に没頭。だから、死の間際に松平さんがそんな父親に呼び出されたとき、松平さんは無視した。今さらあの男に「父親」面されたって、みたいな。彼の父は、子(松平さん)が同じく官僚的世界に踏み込んだときも、子をバカにした。家族とか親子とかいう情のつながりを、松平さんは父親との間に全く感じることのないまま中年になって、自分も仕事人間になっている。小説でのそういう設定は、ラストの伏線として生きていると思う。


でも映画では、松平さんのお父さんは、実は官僚でも何でもなくて、ただの酒飲みのダメ人間みたいな扱いで(松平のコンプレックスは、父を超えられないコンプレックスではなくて、ださい父を持つ子の周囲の目に対するコンプレックスに変えられている)…。一方、大輔くんとこのお父さんは、小説では、お好み焼屋の主人としての顔と「総理大臣」としての顔のギャップがおもしろいんだけど、映画では、まるで官僚的な人間がなぜか昼間は冴えないお好み焼屋のおっちゃんを演じてる風で、とても違和感があった。


なんで変えちゃったんだろう。とても不思議。(岡田くんと綾瀬さんの男女チェンジはOKと感じたけれど。)



そう言えば、大きくテーマ的にはたぶん『おくりびと』に近いであろう『アントキノイノチ』も、すんごく見に行きたくて、でもお金も余裕ないし…という『プリンセス トヨトミ』的な状況で、もう終わったのかな。でも、これも、評なんかをいろいろ見たら、さだまさしの原作本はとても良いのに…みたいな書き込みをよく見るので、とりあえずテレビでやるのを待とう。(今度は、敢えて原作本は読まないままで待ってたほうが、映画を楽しめるかな。)