Hedwig and the Angry Inch - soundtrack | ダッチワイフは電動コケシの夢を見るか?

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残念ですが、貴方がお望みのエロエロな画像や動画などはありません・・・


 頂いたコメントで思い出した事がまたあって、それに似合った音楽と思ってこの映画を思いついたんだけど、題名がサッパリ思い出せなくて探すのにえらい苦労しました・・・・・ ヘドウィグの字も出てこないしw

 しかし不思議な事に記憶とは、鍵となる言葉を目にすると色々滲み出て来るもんなんだけど、その滲み出てきた欠片がうまく組み合わさってくれないわ、必要な欠片が消え失せてしまっているわと、今回は文章として構成するのが結構大変でしたが、でもまぁ、余り事細かく書くと問題もあるから丁度いいのかもしれません。

 さて、その思い出した事とは、私が出会ったある少年の悲しき恋の物語です。


Hedwig and the Angry Inch ( The Origin of Love )


 ここに一枚の写真がある・・・・ と、格好よく言いたいところだが、残念ながらそんな物は私の手元には無い。ただ記憶の中にその写真の情景があるだけだ。
 その写真とは、とあるゲームセンターで私が少年達に書類を掲示している瞬間を切り取った物だが、他にも、ゲームセンターの従業員を 威嚇 制止しているコロンビアの写真や、警察官が少年達を連行する状況写真等も有った筈だ。武士が撮ったその数枚の状況写真は、使える物は報告書と共に依頼人に引き渡されてしまったし、使えない物はフィルムと共に調査会社のキャビネットの奥底に眠っていると思う。
 そんな写真が撮られたいきさつは、例に拠って例の如く一通の電話から始まる。

 電話はある調査会社からのもので、当時この会社は私達に変わった案件の仕事を振ってくる事が多かった。ただ、変わった案件と言っても面白い内容のものだけではなく、他の下請け連中が引っ掻き回したり辞退したりした後始末的な案件も多くて、この電話で相談された話もそんな込み入った類の案件だった。
 案件担当の親爺が必要としたのはバイク乗りが二人、私の仲間内で言えば例の戦国三人衆とコロンビアだ。普段なら直接彼等に連絡がいくのだが、今回私の方に話を通してきた理由は、現在調査中の連中から仕事を引き継いで案件の指揮を私に任せたいという事からだった。
 どうやらその案件は、先発連中が色々とへまをしてくれたお陰でなかなか結果が出せず、業を煮やした社長が「BabyBoy達のチームに調査を任せろ!」と担当者に捻じ込んでくれたらしい。私達からしたら「ご馳走様www」ってな話だ。
 
 そうやって巡って来た案件の内容は、16歳の家出少年の発見と保護だった。そして現在調査中の対象者は、その少年の恋人と目される大学生だと言う。
 残念ながら少年が家出した当時の詳細な状況を私はよく覚えていない。うろ覚えでは確か、少年が姿を晦ませた後に両親が少年の部屋を探索したところ、インターネットのチャットだか掲示板だかで知り合った大学生とのメールを見つけ出した。その数通のメールの中に、家出をしてその大学生と逢う事を窺わせる内容を見つけたのがこの調査の発端だったと思う。でなけば、何かの事件に巻き込まれたと思われて大騒ぎ(まぁそれでも十分な騒ぎだが)になっていた筈だから。
 大学生に逢う為の家出と知った両親は地元の警察に捜索願を出したのだが、ただの家出じゃ警察も真剣に捜索する訳が無く、また少年の居住地が九州なのに対し大学生の居所が東京だという事も警察を億劫がらせる一因だった。その後、両親は自分達でこの大学生に電話をして迫ったらしいのだが、まぁ「知らない」と言う返答しか得られなかったのは言うまでもない・・・・。どうせ警察も同じように電話して、同じような返答で納得したんだろう。

 そして担当からはもう一つ追加の情報も聞かされた。それはこの少年が同性愛者だという事。で、そうなると現在調査中のその恋人ってのも、当然"男子大学生"って事になる。
 ん?悲しき恋の物語じゃねーだろって? いやいや、このエントリーで選んだ曲から考えたら一目瞭然な話だろ?

Hedwig and the Angry Inch ( In Your Arms Tonight )


 まぁ訳の分からん追加情報は気にならなかったが、調査経過の方は大いに気になる。先に手掛けた奴らから報告された調査経緯は、大学生が普段スクーターで移動する事、大学生が少年と接触したのを一度は確認している事、そしてその時に尾行が発覚しかけた上に失尾してしまっている事だ。
 面倒で迷惑な話だなと思った。バイクをバイクで追う上に相手は警戒しているってな話だと、そんなに気軽な案件とは言えないからだ。だがバイク尾行に関しては武士とコロンビアが悩む事で、その辺は私が気を揉む事ではないし、それにちょっと調査方法を変えれば何とかなりそうな算段はあったから。

 仕事を引き継いでから数日後、大学生がうまい具合に引っ掛かってくれた。私達が諦めたものと思って安心していたのか、それとも少年に逢いたいという渇望なのかは判らないが、まぁ大抵の子供は我慢が効かないものなんで所詮ただの小僧だったって事かもしれない。
 その日の大学生はやや警戒しつつスクーターで家を出ると最寄の駅に向かった。駅に到着した彼は付近にスクーターを駐車させ都心に向かう電車に乗車したので、そのまま武士とコロンビアに追尾を任せて、私自身はその電車の向かう方面に車を飛ばした。

 尾行中の経緯をダラダラ書くと無駄に長くなるので割愛するが、結果を言うと大学生と少年は案の定合流した。やっと私達は、探していた本来の獲物とご対面と言う訳だ。
 だがここからが又ややこしい話で、やっていいなら私達三人で少年を 掻っ攫う 確保する事は容易なのだが、もし大学生が暴れたり少年が抵抗してくると制圧する為に私達は少々乱暴な行動をしなければならない。そして相手が怪我でもしたら別な件で警察沙汰になる事も考えられる。
 まぁそんな理由等から、私は案件担当者と本人を確認した際の手順を決めていた。それは、本人確認後に調査会社からその管轄の警察署に連絡してもらい、警察官が彼を確保するという手順なのだが、これもタイミングという問題がある。連絡した所轄から警察官が来る前に他所に移動されてしまうと、又同じ手順を繰り返さなければならないからだ。はっきり言って面倒臭い事この上ないのだが、流石に催涙スプレーだのスタンガンだの結束バンド(実際は、武士とコロンビアがいればそんな物は必要無いのだが)だの使っていた日には、「お前ら普段なにして稼いでいるんだ?」ってな話になるし、私達に依頼してきた調査会社の体面もあるからそれは選択肢には入れられない。
 そんな訳で私は念の為、依頼主の家族から捜索願受理書の写しと共に我々へ調査を依頼した旨の書面を預かり、所轄の警察官が到着するまでは私達が彼らをその場に足止めするという手順にした。あくまで穏便なやり方で、という事。

 その手順通り、少年と大学生が落ち合った時点で私は調査事務所にその一報を入れ、少年達が私達に都合のいい落とし穴に落ちるまで後をつけまわした。そして、この話の始めに記したゲームセンターに足を運んだ事で彼等はその日、楽しい一時からサヨナラを告げられてしまう。





チョッと長くなったんで次回に続きとします。