8月1日、クラスター爆弾の使用や製造を禁止する国際条約が発効した。

条約には108カ国が署名し、日本を含む38カ国が締結した。

加盟国は保有や製造、輸出入などが禁止されるほか、自国に貯蔵している爆弾は、原則8年以内に廃棄する必要があるし、被害者援助の義務も負う。


葡萄の房の意味のクラスター爆弾は、空中で分解し、内蔵している多数の子爆弾が、広範囲にまき散らし、制圧する。

だが、子爆弾は不発弾が場合によっては3割も発生し、地雷のように地中に埋まるため、放置された不発弾に触れ、子供を含めた民間人が死傷する事故が多発する非人道的な兵器なのだ。


国際NGO「ハンディキャップ・インターナショナル」が2007年にまとめた報告書では、25カ国・地域でクラスター爆弾が使用され、被害者を5万5000~10万人と推計しており、被害者の98%が市民であるとしている。


この爆弾はアメリカがベトナム戦争で大量に使用し、ベトナム、ラオス、カンボジアに投下し続けた。

そのうちラオスには約2億6000万個の子爆弾が飛散し、1~3割程度が不発弾として残ったとも指摘され、被害者が出続けている。

その後、コソボやアフガニスタンやイラクなどで使用され、イスラエルも第2次レバノン戦争で、ロシアとグルジア双方がグルジア紛争で使用している。


我々はこのような爆弾の使用禁止と同時に不発弾の除去と被害者の支援などを行なわないといけない。

しかし、大量のクラスター爆弾を製造し、保有している米国、ロシア、中国といった軍事大国は未加盟のままなのだ。

イスラエルやイラン、韓国、インド、パキスタンなども参加していない。

しかも非加盟国の保有数は、世界全体の8~9割に上るとの見方も出ている。

戦争で使用してる国は軒並み加盟していない現状は、悲しみと共に怒りを感じる。

確かに3年半で発効にこぎつけた、このオスロ・プロセスを無駄だとは言いたくないし、ここから参加国の努力を望みたいが、特に11月のラオスでの第1回締約国会議で、日本はアメリカ、中国を説得するリーダーシップをとって欲しい。

 
しかし、非人道的兵器は他にもある。

昨日核の話をしたが、それにも関係する、劣化ウラン弾である。

劣化ウラン弾は1991年の湾岸戦争で初めてアメリカが使用した。

その後2003年のイラク戦争やボスニアやコソボの紛争の際も使用された。


劣化ウラン弾に使用されているウラン238の半減期は45億年と言われる。

地球が誕生して現在に至る長い期間でやっと放射能の力が半減する程のものなのだ。


劣化ウラン弾頭が着弾し、劣化ウランが燃焼すると、酸化ウランの微粒子となり周囲に飛散する。

これが体内に取り込まれた場合、内部被曝や化学的毒性による健康被害を引き起こす。

湾岸戦争後の米軍の帰還兵、イラク、ボスニア、コソボ等の市民や子供からがんや白血病の罹患、奇形児の出生が増加している。

ネット上には帰還兵の子供の奇形児や白血病に苦しむ被災した子供たちの画像がある。

これらに対して、アメリカなどは因果関係はないという見解をとっているのだ。
劣化ウラン弾による影響調査にはアメリカ、英国、フランス、イスラエル、ロシアは非協力である。


今、世界では地球環境問題を重大事項としているが、これらの戦争行為はその環境破壊に当たるのではないか。

CO2削減の枠を各国決めているが、この爆弾1つ落としたら10万ドルと言うような取り決めをしたほうがいいのではないか。

都市を破壊し、人を殺し、自然を破壊し、一方で環境を守ろうなんて、笑い話にもならない。

特にアメリカには重たい罪の蓄積があるはずだ。

その尻拭いも出来ずに、汚い尻のまま、気取って偉そうに、国際会議に出て何を語れるのか。

ワインの代わりに、クラスターを味わったらどうだ。

プルトニウムのパンと一緒に。







8月2日、オバマ米大統領はアトランタで演説し、イラク駐留米軍について「公約通り、8月31日までに戦闘部隊の任務を完了する」と明言し、「イラクにおける我々の責務は、軍事的活動から外交官による民間努力に変わる」と強調した。

9月以降もイラクに残る約5万人の米軍はイラク治安部隊の訓練にあたる予定だそうだ。

一方、アフガン戦争については「巨大な課題に直面している」と認めた上で、「明確で達成可能な目標に向けて成果を上げている」と語った。


正当性のない侵略戦争を行なった上に、国土を荒廃させ、国民を殺戮し、生活を奪い、治安を悪化させておいて、責務は終わったと演説する神経が理解できない。

こんな横暴で身勝手な理屈が通用すること自体、世界はアメリカをのさばらせることになるのだ。


3日、米財務省はイラン政府による制裁逃れへの取り締まり強化措置の一環として、日本を含む6カ国の21企業がイラン政府の管理下にあるとして、社名を公表した。

イランの核開発や武装勢力への支援を抑制することだ。

また業種は、銀行・鉱業・エンジニアリングと多岐に及んでいるという。

このほか財務省は、タリバンなどの反政府武装勢力に金融支援を行っているとしてイラン革命防衛隊内部の指導者4人の名前を公表したほか、レバノン関連の2つのイラン組織についてもブラックリストに追加した。


イランの主張は、イスラエルの核保有の是非を欧米に問い質してるのである。

公正に見れば、イランの主張のほうが正しい。

まずイスラエルの核保有をどう対処するのかを決めるべきで、制裁はその後考えるべきだろう。

日本は、欧米の態度に追従するのではなく、独自の考えを堂々と述べるべきであろう。

また、同盟国側のクラスター爆弾などの製造会社に融資をしていた日本の金融機関の方が罪は重いだろう。


8月3日、レバノンとイスラエルの国境地帯で、両国軍による交戦があり、兵士ら4人が死亡した。
今回の交戦は、2006年に起きたレバノンのイスラム教シーア派原理主義政党ヒズボラの民兵組織とイスラエル軍との戦闘以降、最大規模の軍事衝突となった。

今後、この地域も緊張が高まり、このような事態は続く可能性がある。これは、ガザ封鎖、イラン制裁とも絡んでくる。欧米や国連の対応がどのように行なわれるかが今後の焦点だろう。


3日岡田克也外相は、来日した国連の潘基文事務総長と会談し、核兵器のない世界の実現に向けて日本と国連が協力を強化していくことで一致した。

潘氏は会談後の共同記者会見で、長崎、広島訪問について「非常に名誉に思う。核のない世界を構築しなければならない。重要で強いメッセージを世界に発信したい」と述べた。

岡田氏は「歴史的に大きな意味のある訪問だ」と評価した。

岡田氏は会談で、9月の国連総会の際に日本主導で核軍縮・不拡散に関する外相会議を開く方針を伝えた。

北朝鮮の核開発問題や韓国の哨戒艦沈没事件をめぐっては、北朝鮮に前向きで具体的な行動を求めていくことを確認。

ある意味ではイランの制裁と連動しているようだが、日本の米軍基地に核兵器がある可能性もあり、日米同盟が存在しながら、国連でどのように主導権が取れるのかは疑問だ。

そんな中、北朝鮮からは以下のようなニュースが入ってきた。

北朝鮮の朝鮮人民軍前線西部地区司令部は3日、朝鮮中央通信を通じて韓国への「通告文」を発表し、韓国軍が白翎島(ペクリョンド)など西海(ソヘ・黄海)上の5島の近隣で海上射撃訓練を実施する場合、「強力な物理的対応で鎮圧する」と警告した。


同司令部は、「我が共和国の領海に対する露骨な軍事的な侵攻行為であり、不法無法の『北方限界線』を守ろうとする無謀な政治的挑発だ」と主張した。また「火は火で制すということは我が軍と人民が選択した不変の意志であり、確固たる決心だ。漁船を含むすべての民間船舶は海上射撃訓練区域に入らないよう通告する」と加えた。


これに対して、韓国軍の関係者は、「今回の演習は、韓国の領海内で行われる防衛演習だ。西海演習は予定通りに実施される」と明らかにした。


5~9日に実施される西海合同演習には、陸海空軍と海兵隊が参加し、4500トン級韓国型駆逐艦(KDX-Ⅱ)など艦艇約20隻や対潜水艦ヘリコプター(リンクス)、海上哨戒機(P3-C)をはじめF-15KやKF-16などの戦闘機が投入される。海岸や海上に侵入する特殊部隊の奇襲上陸阻止演習や白翎島近海での艦砲・水中射撃などが実施される予定だ。


一方、中国の中国新聞網は同日、米国の対北朝鮮金融制裁に対抗して、北朝鮮の3度目の核実験が憂慮されると報じた。同通信は、「今回の米国の金融制裁が、05年9月に実施されたマカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮口座凍結措置と同様の場合、北朝鮮が反発して3度目の核実験をする可能性があると分析されている」とし、06年の1回目の核実験は、米国の金融制裁に対する反発だったと主張した。


数ヶ月前、ゲーツ米国防長官は、新核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」公表を受けた記者会見で、イランや北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)を順守していないとみなし、米国による核攻撃の余地を残すと明言した。

「こうしたNPTを順守していない国や核兵器を獲得した非国家組織に対して、米国はあらゆる選択肢を残している」と核攻撃の可能性を否定しなかった。


オバマ大統領は、新指針がNPTを順守する非核保有国に核攻撃しないと明確化することで(1)米国の核戦略における有事の範囲が狭まる(2)他国にNPT順守を促す―との考えを示した。イランや北朝鮮を念頭に「NPTの義務を果たさない国は孤立し、核兵器取得の追求が安全をもたらさないと認識するだろう」と警告した。

また「安全保障上の最大脅威はもはや国家間の核攻撃でなく、核テロや核拡散問題だ」と力説した。


中国日報によると、ヒラリークリントン米国務長官はこれについて、柳明桓外交通商部長官に電話をかけて新NPRの内容を説明し、米国は拡大抑止など公告した安保公約下に十分な抑止力を提供していくという立場を明らかにした。柳長官は、クリントン長官がNPRと関連する米国の確固たる安保公約を再び確認するなど、両国間の緊密な協議が行われていることを評価したと外交部は伝えた。


これら各国の表向きの発言や行動をどう捉えたらよいだろうか。

アジア、とりわけ日本周辺は緊張状態にあるように見える。

日本のマスゴミは国民に何を伝えたのだろうか。

すべてアメリカ様にお任せしているのが、心地よいのだろうか。


アメリカは「天安」事件でも挑発に乗ってこない北朝鮮をに対し、別の手を考えているのであろうか。

景気回復のために投入した資金ももうすぐ終わろうとしてる中、アメリカは未だ不況を脱しきれていない。

イラクから撤退し、アメリカは戦争や紛争をアジアに見出そうと画策している。

中国とはことを起こさない取り決めだし、韓国では地上戦が被害を蒙る。

考えやすいのは、北朝鮮と日本の紛争だろう。

日本が直接被害を受けたら、日本は当然金を出すだろうと考えている。

普天間やグアムのこともあり、有無を言わさず、日本を利用尽くすだろう。


ネットにはフルフォードの語るガセっぽい話が載っていた。

「米の闇の勢力が東京を核攻撃し、北朝鮮のせいにすることを企んでいる可能性がある

ロシアのKGBの工作員からの情報によると、欧米の闇の政権が東京を大量破壊兵器で攻撃し、北朝鮮のせいにすることを企んでいるという。この攻撃は8月6日の広島原爆の記念日に予定されているらしい。」


荒唐無稽な話にも見えるが、これに近いことが起きても不思議はない。

8月は日本に2つの核爆弾が落とされた月である。

また、JAL123便も「純粋水爆」を使用されたという疑いや証拠が出てきている。

あれも同じく8月である。

まだ暑い夏を感じるあの9月11日、NYのビルを爆破したのも「純粋水爆」との疑念がある。

アメリカは核を夏に使いたがるのかもしれない。



日本振興銀行の社外取締役で弁護士の赤坂俊哉さん(51)が東京都目黒区の自宅で死亡していたことが分かった。警視庁目黒署によると、室内には遺書めいたメモが残されていたといい、現場の状況から自殺とみられる。

同署によると、7月31日午前、家族が赤坂さんの自室を開けると既に死亡していた。着衣に乱れはなく、外部からの侵入の形跡もないことから自殺と判断したという。遺体の状況から死後数時間が経過しているとみられる。

同行を巡っては、09年6月から今年3月まで行われた金融庁の立ち入り検査の際、前会長の木村剛容疑者(48)ら元幹部計5人が業務メールを削除したなどとして銀行法違反(検査忌避)容疑で逮捕されている。

一方、同行は「死因は心筋梗塞で、自殺とは聞いていない」と説明している。


これは2日の毎日新聞配信記事である。他紙も他の放送局も似たような内容である。

1日置いてこの記事を取り上げたのは、警察第一報を信じない主義なのと、続報があるかということからである。

小さく扱われ、これ以降コメントも各社なしである。

ネットでは疑問の声は上がっている。

また自殺に見せかけた「口封じ」ではないかという意見が大半である。

その可能性はあるだろう。

何故、報道が1日半も遅れたのか。

銀行側は誰から心筋梗塞と聞いて、そう説明したのか。

何故、その裏をマスコミはとらないのか。

司法解剖はなされるのか。

他紙では「多忙」を自殺動機のように書いているが、「多忙」から解放される人が、慌しくメモのみの遺書などありえるだろうか。

また「多忙」なら会社宛に仕事の引継ぎなどの申し送りも必要だろう。

それらを含む関係資料を持ち出すのに、1日が必要だったのだろうか。


小泉政策に関連する不審な死は、これまでもいくつもある。

2001年10月、NHKの長谷川浩氏は自社の渋谷放送センターから転落死している。

彼は9.11テロのアメリカ陰謀説に関連して「WTCの死者には、4000人いたイスラエル国籍のユダヤ人二重国籍米国人が1人もいなかった」と番組で発言していた。


2003年4月、朝日監査法人のりそな銀行担当公認会計士だった平田聡氏は自宅マンションの12階から転落死した。

朝日監査法人がりそな銀行の繰延税金資産を否認する方針を協議した本部審査会の直後だった。

彼はりそな銀行の繰延税金資産否認に強く反対していた。

2006年12月、朝日新聞社の鈴木啓一氏は東京湾で水死。自殺として扱われる。

彼は救済を受けたりそな銀行が、直後の3年で自民党への融資が10倍になったことをスクープをスクープしたばかりだった。

2007年4月、読売新聞の石井誠氏は自宅で後ろ手に手錠をかけられ、口の中に靴下が詰まった状態で死亡してるのを発見されたが事故扱いとされる。

彼はりそな銀行は竹中平蔵らの謀略によって、自己資本不足に追い込まれた疑いがあると追求し批判していた。

同じように竹中平蔵らに批判的立場であった植草一秀氏は、痴漢冤罪事件で社会的地位を失った。

現在はこの謀略グループ「悪徳ネオコン」を追及する執筆やブログで活躍されている。

植草氏のこの小泉竹中の陰謀に関する文章は的確で理解しやすい。

「振興銀行」と「りそな銀行」の事件に関して6月のブログは解説書のように判りやすいので掲載したい。
 

植草一秀の『知られざる真実』


日本振興銀行をめぐる黒い霧


日本振興銀行が検査忌避をはじめとする法令違反により金融庁から刑事告発され、犯罪捜査が始まった。

刑事捜査の最大の焦点は日本振興銀行を実質支配してきた木村剛氏の関与である。

「木村銀行」と呼ばれてきた日本振興銀行であるから、経営上の重大な方針決定に木村氏が深く関わったと推察するのが順当であろう。


今回俎上に載せられているのは検査忌避や出資法違反などの七つの法令違反であるが、そもそもこの銀行の設立自体が黒い霧に包まれていた。


2002年10月、小泉政権は内閣改造を実施した。小泉政権発足後、日本経済は景気崩壊-株価暴落-金融不安拡大の一途をたどった。経済財政政策担当相として民間人から起用されたのが竹中平蔵氏だった。風評では内閣改造で竹中氏が更迭されると予想されていたが、実際には竹中氏が経財相に加えて金融相を兼務することになった。
この人事は米国の指令によるものだと見られている。この後に日本株価が暴落し、りそな銀行が自己資本不足と認定され、2兆円もの公的資金投入で救済されたのが、いわゆる「りそな疑惑」である。



「疑惑」と称する理由は多岐にわたるが、
①自己資本算定における繰延税金資産の取り扱い問題が急浮上したこと、
②りそな銀行だけが繰延税金資産5年計上を認められなかったこと、
③この問題を強く誘導した木村剛氏は2003年5月14日段階で、なおゼロないし1年を強硬に主張したが、結果が3年計上になったこと、
④その木村剛氏がゼロないし1年以外の決定を示す監査法人は破たんさせるべきとの強硬論を訴えていたのに、3年計上が決定されたのち、木村氏が一切の批判を示さなかったこと、
⑤竹中平蔵金融相が2003年2月7日の閣議後懇談会で株価連動投信ETFについて、「絶対もうかる」と発言したこと、
⑥朝日監査法人で自己資本不足認定によるりそな銀行監査委嘱辞退決定に強く反対したと見られるりそな銀行担当会計士平田聡氏が2003年4月24日に、自宅マンションから転落死したこと、
⑦政府がりそな銀行を救済したのち、りそな銀行幹部が一掃され、新たに政府近親者がりそな銀行幹部に送り込まれ、自民党に対する融資を激増させたこと、
⑧2006年12月18日の朝日新聞朝刊にりそなの対自民党融資激増のニュースをスクープで報じたと言われる朝日新聞記者鈴木啓一氏が東京湾で水死体になって発見されたと言われていること、
⑨りそな銀行が標的にされた理由が、りそな銀行最高幹部が小泉竹中経済政策を厳しく批判していたことにあるとの疑惑が存在すること、
⑩りそな銀行処理の基本スキームが米国から竹中氏に伝授された疑いが濃いこと、
など、疑惑の総合商社状態になっている。


2002年10月に発足した小泉改造内閣の下で、竹中平蔵金融相は直ちに金融再生プロジェクトチーム(PT)を編成し、10月末に「金融再生プログラム」をまとめた。
このプロジェクトのなかで、木村剛氏は銀行の自己資本算定時の繰延税金資産計上を米国並みのゼロないし1年に圧縮するとの提案を示した。PTはその制度変更を2003年3月期決算から適用する考えまで示唆した。
猛反発したのが銀行界である。ゲームの最中にルールが変更されたのではゲームを行えないというのが銀行界の主張であった。正当な主張である。


米国の場合には貸し倒れのリスクに備えて引当金を積み立てることが無税で認められていた。その代わり、繰延税金資産の計上が制限されていたのだ。日本の場合、貸倒引当金の無税償却は認められておらず、その見合いで繰延税金資産計上が相対的に多く認められていたのだ。木村氏はこのような基本事項さえ理解していなかったものと考えられる。


銀行界で最も強烈な反発を示したのが三井住友銀行の西川善文頭取だった。しかし、西川氏の姿勢は2002年12月を境に急変した。西川氏は同年12月11日に竹中氏、ゴールドマン・サックス証券のCEOポールソン、同COOセイン氏と密会し、ゴールドマンからの資金調達と竹中氏からの2003年3月決算クリアの保証を確保したのだと見られる。
金融庁は2002年10月30日に「金融再生プログラム」を発表した。
このなかに、ひとつの条文が潜り込まされていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.新しい金融システムの枠組み
(2)中小企業貸出に対する十分な配慮
 主要行の不良債権処理によって、日本企業の大宗を占める中小企業の金融環境が著しく悪化することのないよう、以下のセーフティネットを講じる。
(ア)中小企業貸出に関する担い手の拡充
 中小企業の資金ニーズに応えられるだけの経営能力と行動力を具備した新しい貸し手の参入については、銀行免許認可の迅速化や中小企業貸出信託会社(Jローン)の設置推進などを積極的に検討する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
注目される部分は、
「新しい貸し手の参入については、銀行免許認可の迅速化・・などを積極的に検討する」という表現だ。

 木村氏は中小企業金融銀行設立の意向を有していたと見られる。金融再生PTのメンバーになった地位を利用して、金融再生プログラムのなかにこの文言を潜り込ませたのだと思われる。
また、木村剛氏はりそな銀行を自己資本不足に追い込むために、りそな銀行の監査法人である朝日監査法人への働きかけを行ったと見られる。そのひとつの表れが、2003年3月17日の木村剛氏と朝日監査法人亀岡義一副理事長とによる会食である。
会食の直接的な理由は、亀岡氏が木村氏に株式会社オレガの代表取締役落合伸治氏を紹介するためだったという(「月刊現代」2009年1月号佐々木実氏論文)。
木村氏は将来利益の計上が困難視される状況の下では、繰延税金資産の計上を認めるべきでないことを、りそな銀行を念頭に置いて説得したと考えられる。
上記論文執筆者の佐々木実氏は、4月16日に朝日監査法人が速報ベースのりそな銀行決算見通しを受け取って以降に朝日監査法人最高幹部が示した見解が、木村氏の主張と瓜二つであることを指摘している。


朝日監査法人は2002年3月にKPMGと提携契約を締結している。木村氏はKPMG関連の日本法人の代表を務めていたのであり、木村氏は竹中平蔵氏との強い関係とKPMG関連法人代表の立場を利用して、朝日監査法人にりそな銀行を自己資本不足に追い込むことを強く要請したのだと考えられる。
日本振興銀行問題に戻すと、同銀行の設立までの経緯は以下の通りである。
2003年 4月    落合伸治が準備企画会社「中小新興企業融資企画株式会社」を設立し社長に就任
2003年 8月20日 銀行免許の予備申請
2003年10月31日 予備申請認可
2004年 3月15日 本免許申請
2004年 4月13日 金融庁より銀行免許交付
2004年 4月21日 開業
2005年 1月 1日 取締役の辞任が相次ぐ中、創業メンバーで、取締   役会議長(社外取締役)の木村剛が自ら社長に就任


最大の特徴は、金融庁が異例のスピードで新銀行設立の審査、認可を行ったことである。上記の通り、2003年8月に銀行免許の予備申請を行って、翌年4月には銀行を開業している。
 創業者である落合伸治氏は木村氏を含む役員に銀行役員を解任され、木村氏が社長に就任したのだが、結果からみると木村氏は落合氏などに銀行を設立させて、設立させた銀行そのものを乗っ取ってしまった形になる。
 金融再生プログラムに私的な営利活動のための条文を忍び込ませ、銀行設立を申請し、金融庁が異例の迅速さで審査および認可するとの行動は、行政の私物化以外の何者でもない。法令違反の有無を詳細に検証する必要がある。


政権交代が実現し、金融担当相に亀井静香氏が就任して、初めて日本振興銀行の黒い霧にメスが入れられることになった。さらにりそな銀行疑惑に対しても真相究明の力が波及することになるだろう。
 「天網恢恢疎にして漏らさず」
 真相の徹底解明が求められる。

これは、6月時点なので解明が望まれると結んでいるが、この深層までは行き着かないのではという疑念が出てきた。

先ほど速報で、以下の記事が配信された。(朝日)


東京地検特捜部は3日、日本振興銀行の前会長・木村剛容疑者(48)ら4人と、法人としての同行を銀行法違反(検査忌避)の罪で東京地裁に起訴した。

 警視庁の逮捕容疑では、木村前会長らは金融庁による立ち入り検査を受ける直前の昨年6月中旬、振興銀のサーバーに接続して業務に関するメール約280本を削除したとされる。また、木村前会長らは検査が開始されて2カ月後の昨年8月中旬にも、業務メール約430本を削除して検査を妨げたとして、追送検されていた。

 削除されたメールには、経営破綻(はたん)した商工ローン大手SFCGや、振興銀の融資先企業など百数十社で構成する「中小企業振興ネットワーク」の加盟企業との間で送受信された内容が含まれていたとされる。

 木村前会長は振興銀の設立メンバーで、社長や会長を歴任したが、今年5月に業績悪化を理由に辞任した。


この「検査忌避」という罪は一体どのくらいの罪なのだろうか。

ここだけで終わったのならば、全く拍子抜けもいいところである。

何のための逮捕だったのか。

他の罪状による起訴はあるのだろうか。

本丸はここではないのだが、そんなことを検察に求めるのは到底無理なのだろう。

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