『感傷的な午後の珈琲』の中で小池真理子さんが
本の読み方には3種類ある。と書かれていた。
1.登場人物と同化するように、どっぷりと嵌る読み方。
これはもう最高に幸せな時間だと思う。
でも、読み手側の価値観と内容が一致していないと
許せない、なんて抗議が作家側に来たりもするらしい。
・・・なんて愚かな。
他者の価値観に沿うように創られた物語は哀しい。
でも、そういう物語に出会うこともある。
2.本の中に答えを見つけようとする読み方。
萩尾望都さんの『一度きりの大泉の話』のなかで
理解できない人間に係ってしまったら
本の中に、似た人を探して、少しでも知ろうとする。
そんな描写を見つけたとき、
私がやっているのはこれなんだ。と思うことがあった。
そして、今後の読書が豊かになりそうな読み方として
目から鱗だったのが
3.いち早く物語のテーマを捉えて、それに沿って読む
という読み方。
読書は世界を広げてくれる。
厳密には、自分というフィルターは通してしまうのだけれど
それでも、のびのびと、別の世界に遊ぶこともできる。
小池真理子『虹の彼方』は、3の読み方をした。
幸せな時間だった
メトレス 愛人 (文春文庫 わ 1-18)の感想
修子の言葉の遣い方は歳の離れた男性に刺さるんだろうな。上品で他人行儀セクシーで。遠野の自信が粉々になるのは、なんとも気の毒。でも、結構そういう話をきく。自分の身の回りのことは己でできる人間でないと選ばれないのかも。
読了日:04月03日 著者:渡辺 淳一
ひそかに胸にやどる悔いあり (双葉文庫 う 19-02)の感想
寄り添いながらも阿らない上原さんの存在なくては出てこない、ひとりひとりが持っている物語。それを、大切にそっと味わう。jazzbar時代の村上春樹氏の姿も出てくる。時の流れは平等で、そのなかで何を体験していくのか。これからの私はどんな物語を体験していくのだろう、そんなことを考えた。
読了日:04月14日 著者:上原 隆
ありふれた祈り (ハヤカワ・ミステリ 1890)の感想
1961年の夏、13歳だった僕をふりかえる物語。牧師の父、華やかだった母、吃音の弟、美しい姉。え?!という隙に命が奪われる。エアポケットに入ってしまったような一瞬。残された者たちは、喪失を咀嚼しなければ生きていけない。わ~~ん、そんな。というラストだけれど、物事を静かに振り返る元少年の姿にほのかな光を感じる物語だった。
読了日:04月14日 著者:ウィリアム ケント クルーガ
もうひとつの景色の感想
芸術家の父を恋しく求めるエマ。その男に嵌っちゃダメよ~。とかジリジリしながら読む。心優しいラストで心底ホットした。手遅れになる前に、ちゃんと救いがあった。
読了日:04月14日 著者:ロザムンド ピルチャー
不倫 (文春新書 1160)の感想
インフラにタダ乗りする『フリーライダー』への妬みについての考察がもう、目から鱗。不倫を非難する人々は、実は自分のことを語っているのではないかと思うけれど、脳科学からの分析も面白い。
読了日:04月14日 著者:中野 信子
不倫と正義 (新潮新書)の感想
不倫という題材に、教養が加わるともう無尽蔵に話題が広がっていく。時代ごとの倫理観なんて数十年単位で変化するので、もっと深いところから話をしたいなと思うなら是非手に取ってみて欲しい。読みたい本も増えて楽しみ。
読了日:04月14日 著者:中野 信子,三浦 瑠麗
女性失格の感想
私という『個』を消してしまう恋。真ん中に寂しさがあって、それは満たされないブラックホールのような魔物。寂しさの宥め方、扱い方がわかれば、どれほど人生楽だろう。葉湖の生き方って、失格ではない、ちゃんと生きてるもの。
読了日:04月14日 著者:小手鞠 るい
川のある街の感想
3章における時の流れが甘く残酷で心に残る。2章の烏は、まるで自分も仲間になったかのよう。そんな視点が新鮮だった。
読了日:04月15日 著者:江國 香織
愛するあなた 恋するわたし: 萩尾望都 対談集 2000年代編の感想
吾妻ひでおさんに、恩田陸さん、庵野監督やヤマザキマリさん、対談相手が強者揃い。でも、憧れの萩尾さんを前にして、一ファンに戻っちゃうような普段の顔が見られて楽しい。萩尾さんってユーモアがあって人をリラックスさせてくれる人なんだな、と思う。素敵な対談集。
読了日:04月18日 著者:萩尾 望都
アンソーシャル ディスタンスの感想
5つの短編集。前半の女たちはなんてギリギリなんだろう。自分と闘ってる。恋人は単なる自分の鏡でしかない。でも、仕事での有能さには惚れ惚れする。後半2つはコロナ禍での恋人たち。ウイルスに追い詰められる精神状態が生々しく、思いもよらないその人の本質が出てきて、まるで見知らぬ人のように変容していく。全編、目に見えないものと闘ってる。
読了日:04月19日 著者:金原 ひとみ
平野レミのオールスターレシピ 家族の絆はごはんで深まるの感想
最後の方のページに誠さんからのサプライズが載っていて、もう胸がいっぱいになった。料理本だけれど、レミ本。
読了日:04月25日 著者:平野レミ
感傷的な午後の珈琲 (河出文庫 こ 3-2)の感想
物語の読み方は3種類あるという、中でも豊かに人生が広がりそうなのが、物語のテーマを捉えてそれに従う読み方。これ、ちょっと肝に銘じてみよう。なんだかますます読書が楽しくなりそう。自分の価値観から自由になろう。読書の中でくらいいいじゃない。読みたい本もいくつか増えた。
読了日:04月30日 著者:小池 真理子
秘密 小池真理子対談集 (講談社文庫)の感想
伊集院氏、石田衣良氏、渡辺淳一氏、小川洋子さん高樹さん等、作家vs作家なので、嫌味の応酬があったりしてと思っていたら皆さんもう健やかに恋・性・死を語る。なんて素敵なこと。そうそう、作品にモラルなんて求めてないし。本音で盛り上がったことが一目でわかる写真も素敵です。小池さんと一緒に呑むお酒は楽しいんだろうな。
読了日:04月30日 著者:小池 真理子
虹の彼方の感想
著者のエッセイを読んでこれは読んでみたいと思い手に取った。w不倫の話。こんなふうに、一目で惹かれあう相手と出会ってしまったら仕方がない。誰が悪いわけでもない、まして配偶者の努力が足りないわけでもない。ただ、出会っちゃった。恋、奈落に落ちちゃった。何処までも進んで欲しいと思った。このラスト小さな光が見える、好き。
読了日:04月30日 著者:小池 真理子
ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)の感想
車でペッちゃんこに轢いた鍋のように、愛しいブラフマンも轢いちゃった。「僕」が隣に乗せていた「娘」はまるで無関心。読んでいる間、しらないうちに物語の舞台になっている南仏?の風景を想像して、風にあたったり、においを嗅いだり、ブラフマンになりきっていた。
読了日:04月30日 著者:小川 洋子
ハジケテマザレの感想
カレーに激辛料理。そして、ワインにビール。飲食店でバイトをする彼らが、自由につくる料理の数々に身悶える。停滞しているようで、ちゃんと次の場所に進んでいく。彼らの会話のなかに、各々の哲学が垣間見えるのが、更に楽しい。言語化することの快感。
読了日:04月30日 著者:金原 ひとみ
きみのためのバラ (新潮文庫)の感想
バラを捧げた相手にはおそらく二度と逢うことはない。旅先でのほん小さな出会い。でも、こんな幸せな記憶を身体に刻めるのは素敵。今後、いくつ刻めるかな。そしてこれから出会う人にも、自分の幸福感がお裾分けできるような、そんな人生を送りたい。見知らぬもの同士だからこそできる、出会い方別れ方。
読了日:04月30日 著者:池澤 夏樹
エブリシング・バブルの崩壊の感想
中国は一度進出してしまうと、二度と開けられない財布にお金をつぎ込むような契約になっている。資産を放棄しない限り撤退もできない。エミン氏と一緒に、さまざまな歴史や経済の流れをたどるうちに、徐々に崩壊に近づいていることを感じる。日本も1年でこれほど変わるとは。自分に一番足りないのは、地政学リスクについての想像力。現状把握もできていないわ。まさに島国のカエルってことに改めて気が付いた。
読了日:04月30日 著者:エミン・ユルマズ