11月の読書メーター
読んだ本の数:20
『真珠とダイアモンド』は胸が痛くなるけれど
途中でやめられない面白さだった。
人がお金の渦に巻き込まれていくバブル。
育ちが貧しかったというコンプレックスを
向上心に変えて、その時代にあわせて努力した人たちが
お金の力で豊かな暮らしを手に入れながら、狂っていく。
自分ならどうしただろう。と思いながらも
止められない、止まらないジェットコースターに
乗ってしまったような、そんな気持ちになる。
それから『精神世界3.0』では
バーベナの中で元祖超能力者としている秋山 眞人氏が
たっぷり堪能できた。再びの秋山さんブームが到来の予感。
(ひとり祭りですが・・・)
こういう方が、きちんと真っ当な生活基盤をもって
同じ時代に生きているということが、すごく嬉しい。
特殊な能力とカリスマ性があると
教団をつくらないかという話が、わんさかくるというのが
一番のホラーだったわ
僕の女を探しているんだの感想
心では分かっているのに、知っているのに、一歩踏み出す勇気が出ない時、リー?ジョン?に人は出会う。無邪気で迷いのない彼と過ごすと、自分の大切な人を、迷わずに愛する勇気がでてくる。彼が探している人はどんな彼女なのか、気になってたまらなかったけれど、そこはあっさりだった。時空を超えてしまったふたりなのかしら。
読了日:11月01日 著者:井上 荒野
精神世界3.0の感想
ランディさんはふたりと長い友人。だからか、自由にフラットな目線でふたりの内面を引き出す。私はふたりのことを誤解していたみたい。優しく、知識の泉のような秋山氏と、危機感を抱き出来ることをする江原氏。え?!という話があったり(それがまたサラッと流される)、1970年代から今に至るまでの、精神世界の総括としても面白かった。もっと知りたいな。
読了日:11月01日 著者:江原 啓之,田口 ランディ,秋山 眞人
真珠とダイヤモンド 上の感想
バブルに湧く時代、福岡の証券会社で出会うふたり。西日の差す木造アパートに住む佳那と、母を抱えて進学費用を貯める水矢子。すっかりふたりのことが好きになってしまった。だから、先が分かっていても祈りながら読む。どうかどうか、寸でのところで気が付きますように、と。
読了日:11月01日 著者:桐野 夏生
真珠とダイヤモンド 下の感想
福岡から上京してほんの2年ほどで、こんなに生活も仕草も変わってしまう。最初から身ぐるみ剥がせると計画していたかのような、やくざのやり方もたまらない。どうすればよかったのだろう。といっても望月と佳那はまだ20代。仕方がないよ。佳那の決断がずっと心に残って読後1週間たっても、ふとした瞬間に思い出す。
読了日:11月01日 著者:桐野 夏生
文庫版 小説 土佐堀川 広岡浅子の生涯 (潮文庫)の感想
浅子さんが成し遂げてきた事業、いまだに続いているもの数々。小異ではなく大同を大切にする。その志を掲げた保険会社も健在。もう、なんて凄い女性がいたんだろうと。日々、無益に過ごすのは勿体ない。次々にひらめき、考え、行動する。言い訳の前にまず動く。力が湧いてくる。
読了日:11月16日 著者:古川智映子
九月に〈下〉の感想
ドキドキしながら迎えたピクニックに、ダンスパーティー。ひとりひとりが親しい人に思えて、なんとか彼、彼女にとって良き方向に進むように願いながら読んだ。アーチ―の独白に知らなかった視点を知った。夫婦は近すぎる。第三者が現れるこの風通し良さ。2023年の秋に出合って大好きになった本。
読了日:11月16日 著者:ロザムンド ピルチャー
力の結晶 中村天風真理瞑想録の感想
心がつくったカタチが、現実の形になる。想いが叶った気持ちで生きる。明るく朗らかな気持ちって大切。それだけで同じ生きている時間が豊かになる。戦後、ロックフェラー3世が話を聞きに来たそう。戦後すぐの日本には、様々な人が日本人というものを探りに訪れていたことを思い出した。
読了日:11月27日 著者:中村 天風
Row&Rowの感想
自宅で美容院を営む夫:孝之と、広告業界でバリバリ働く涼子。最初からボタンの掛け違いがあったみたい。でも、それに縋りたくなる時期もある。ただ、自分の息苦しさに気が付いたら、堂々とやりなおしていい。家で寛げなかった涼子が、孝之と別れることを決断した後の、スコーンと天井が抜けるような爽快感ったらない。ずっと刷り込まれていた、男とは・女とはという価値観に囚われなくていい。なにより、仕事をしてお金を稼ぐことは、寂しさも含めて自由への切符。沼地から青空をみつけて飛び込むような小説だった。
読了日:11月27日 著者:村山 由佳
ユリイカ 2023年11月号 特集=金原ひとみ ―『蛇にピアス』から『マザーズ』、そして『腹を空かせた勇者ども』へ―の感想
まるごと金原さん。長く書き続けてくれているのが嬉しい。金原さんはどんどん変わっていく部分と、変わらない部分があって、それを惜しみなく表現されているのが好き。
読了日:11月27日 著者:金原ひとみ,鳥飼茜,宇佐見りん,エリイ,尾崎世界観,バウンデイングソウル,江國香織,西加奈子
家康の養女 満天姫の戦い (潮文庫)の感想
安芸に嫁いだ後、子供を連れて津軽に嫁ぐことになった満天姫。『関ヶ原合戦図屏風』とともに津軽に嫁いだことからも、家康からの寵愛は深い。といっても、生きる場所もままならない、自由がない時代。そのなかで、強く、賢く、生きた女性。満天姫がイザという時に底力を出す姿がとても好き。切り替えの早さも。でも、子供だけは鬼門だったなぁ。高岡から弘前と名を変えたのは、落雷がきっかけなんだそう。
読了日:11月27日 著者:古川 智映子
ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたことの感想
ランナーでもある著者が、共にトレーニングをしながら書き綴る。何処を走るか、誰と走るかによって、ひとりでは得られないエネルギーが生まれる。彼らはそれを体感している。とても、意外だった。自分だけ、黙々とトレーニングした方がいいのではと思っていたので、全く違う刺激があった。
読了日:11月27日 著者:マイケル・クローリー
黄色い家 (単行本)の感想
黄美子がいつ豹変するのだ?と思いながら読んでいたけれど、豹変していくのは、花ちゃんだった。花はとても働き者でしっかり者。でも、相談したり話したり、常識と言われる基本的生活を教えてくれる相手がいなかった。そんな育ちだった。花と同じ環境だったら、孤独だったら。真っすぐに、花のように突き進んでしまうだろう。そんな自分の姿が重なって読んでいて辛かったな。
読了日:11月29日 著者:川上未映子
動物哲学物語 確かなリスの不確かさの感想
ドリアンさんの視線は、動物の眼にも、樹々にも、風にもなる。世界は知らないことだらけ。ところどころ、クスっと笑える。どうやら、哲学って頭で考えることばかりではないみたい。
読了日:11月29日 著者:ドリアン 助川
世界インフレ時代の経済指標 目先のイベントにジタバタしない“大局観”が手に入るの感想
経済指標はじゃんじゃん出てきて、呼び名だけはなじんでいても、活用できない。でも、この本をよんだらちょっと頭がすっきりしてきた。次は、債券価格と金利の関係を腹落ちしたい。
読了日:11月29日 著者:エミン・ユルマズ
傲慢と善良 (朝日文庫)の感想
自己評価は低いのに自己愛が強い。この言葉に出会えたことは財産。なんてあからさまな。でも、それを認めてから、新しい人生が始まる。心が痛いよね。
読了日:11月29日 著者:辻村 深月
紅梅の感想
もう17年も経つなんて。再読。紅梅のタイトルと表紙にもしみじみする。
読了日:11月29日 著者:津村 節子
事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング (集英社文庫)の感想
順番を間違えて一作目読んでないけれど、十分楽しめた。張り巡らされた伏線が怖い。社会学者やら、自己啓発本やら、インフルエンサー?やらを使うという、金に糸目をつけない手法で、小さな不動産屋をつぶしにかかってくるデベロッパー。手が込んでいて怖い。
読了日:11月29日 著者:原田 ひ香
噓つきジェンガの感想
一話目が一番怖かった。ちょっとお金が欲しい、と思っていただけで、なんとなく巻き込まれてしまい、実家を含めた個人情報を把握されて逃げられなくなってしまう大学生。こんなふうに始まってしまうのか。どの話もラストは希望がある。彼等、彼女たちは、少し強くなって、新しい自分を生きていく。
読了日:11月30日 著者:辻村 深月
左岸 上 (集英社文庫)の感想
茉莉の力強さを体感したくなって久しぶりに読む。こんなに移動する物語だったのか、と驚く。自由でのびのびしすぎている茉莉は、幼馴染の九と兄がいれば毎日が冒険。そんな茉莉は、駆け落ちして東京に行ったり、福岡にもどったり、パリにいったりしてどんどん移動していく。母:喜代と父:新の夫婦関係が切ない。
読了日:11月30日 著者:江國 香織
左岸 下 (集英社文庫)の感想
のびやかな茉莉は働き者。職場の仲間と良い関係をつくって、ちゃんと自立して生きていることに、誇りをもっている。男の人は死んでしまうか、ぐうたらになってしまうかどっちか。この言葉がでてくる茉莉が好き。九ちゃんは目に見えないものを捕まえようとしていた。茉莉は、ふわふわしているようで、物事を即物的に捉え、地に足がついていてる。対照的。最近、静かに沈んでいたけれど、読むことでエネルギーが充電できた気がする。
読了日:11月30日 著者:江國 香織