疲れたあ、と思わずつぶやいて門の外の熱地獄に出ても、体中から吹き出てくるのは汗ばかりではなく、いい生徒達だよなあ、という感慨。

教師はおかしなやつばかり。でも生徒がいいんだよなあ。

新米教師のこの老骨はまだこの学校に一月あまり。ピンチヒッターで6月一日から来たが、何もかもが始めてづくしなのに、誰も、老人顔のせいで新米扱いしない。むしろ反感を持って、教えないよ、という姿勢。特に一人いつ男性教師はひどい。社会性も礼儀も何もない。新米老骨にいきなり出欠席をつけろといい、試験問題を持ってきて貼り付けてくれと言い放ち、あきれるばかり。授業法、参考書類の使用法,リスニングの教授法、iPadの有機的な使用法,教務関連の30頁を超える規定集や、各種IDとパスワードの群れ、連絡はすべて、メールで、人と人とが顔を合わせて話すという特権はもうとっくに放棄して、顔を見合わせて話をする習慣がこの人達にはない。校長職に就いているオーナーは、口を開けば、生徒担任から,やっかみの血栗が来ているから気をつけて、ばかり。

ところが、生徒がいい。性質、性格、心ばえがいい。羨むことがこの上なく好きな数人がいるも、それは女子の集団だから仕方ない。ほとんどの生徒はじっと黙って、好きなことに熱中している。芸術家のような怖い引き締まった表情をしている生徒もいる。寝ている子も、勉強しない子も、本質的な人間の良さがにじんでいる。

リンカーンは,人の心の奥には善なる天使が住んでいる,と喝破した。

angels of your nature という言葉を残した。東高円寺を降りると,その生徒達の善性が感じられてくる。幸運だなあ。最後の仕事になるだろうこの勤めも、来年続けたいなあ。頼むよ神様。